JPSJ注目論文

JPSJ 2008年6月号の注目論文

「超伝導転移温度54Kの新超伝導体NdFeAsO1-yの高圧合成に成功」

新超伝導体LaFeAsO1-xFxがわが国で発見されたことに端を発して、希土類原子(Ln)と鉄(Fe)とヒ素(As)を含む新超伝導体LnFeAsOに関する研究が世界的に急速に展開されている。
産業技術総合研究所の伊豫彰、永崎洋、鬼頭聖の3氏は、"高圧合成"法と呼ばれる手法を用いた物質探索を試みた結果、ランタン(La)をネオジウム(Nd)に置換し、酸素(O)をフッ素(F)に置換する代わりにOの欠損を導入したNdAsFeO1-y系において転移温度が約54Kという超伝導体を見い出した。
高温超伝導物質LnFeAsOの探索指針を与え得る成果として、研究者の強い注目を集めている。


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「鉄を含む新型高温超伝導体の超伝導ギャップと擬ギャップの直接観測に成功」

新超伝導体のメカニズムを解明するためには、まずその電子状態スペクトル、特に超伝導性に伴う超伝導ギャップの性質を知ることが不可欠である。東北大の佐藤宇史氏と高橋隆氏らの研究グループは、東工大の細野秀雄氏のグループと共同で、LaFeAsO1-xFxの光電子分光実験によってその超伝導ギャップの観測に初めて成功し、これまで超伝導に縁がないと考えられてきた鉄の電子自身が超伝導を担っていること、その超伝導メカニズムが従来のBCS型超伝導体とは大きく異なること、さらに、転移温度以上において「擬ギャップ」が存在することを見出した。 新超伝導体LnFeAsOにおける磁性と超伝導の競合/共存メカニズムの解明に大きく寄与する結果として研究者の注目を集めている。


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「強誘電性ヒステリシスループの新しい測定法」

巨視的な電気分極が自発的に生ずる強誘電体にゆっくりとした交流電場をかけると、測定される電気分極は、強磁性体の磁化-磁場曲線と類似の履歴曲線を描き、その形状から自発(強誘電性)分極の大きさが見積もれる。但し、多くの強誘電体では、強誘電的でない分極成分が履歴曲線に上乗せされる。
東北大の福永守、野田幸夫の両氏は、この上乗せ分だけを相殺するように履歴曲線の採り方を工夫した、強誘電体自発分極の測定法(「二重波法」と名付けられた)を開発した。自発分極が比較的小さな物質---電場だけでなく磁場でも分極が変化するという特異な物性を示す、「マルチフェロイック」とよばれる物質など---に威力を発揮する新しい測定法として、研究者の注目を集めている。


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