JPSJ注目論文

JPSJ 2008年7月号の注目論文

「遍歴反強磁性体から非従来型超伝導へ:NMRで見た鉄系高温超伝導体LaFeAs(O1-xFx)」

わが国発の新超伝導体の超伝導メカニズム解明を目指して、京大の石田憲二氏グループは東工大の細野秀雄・神原陽一の両氏らと共同で、LaFeAs(O1-xFx)のミクロな電子状態について、核磁気共鳴法(NMR)実験による詳しい解析を行なった。
その結果、母物質(x=0)は遍歴反強磁性体に特有な振舞いを示し、酸素がフッ素に置換されると、超伝導ギャップが線状に消失する、「非従来型」超伝導を示すこと、さらに、フッ素置換によって常伝導状態の磁性がより大きく変化することなどの新超伝導体に関する基礎データが得られ、研究者の強い注目を集めている。


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「ソリトン理論によるPT対称ポテンシャルの構成」

量子力学の基本原理の一つに、観測される量(例えばエネルギー)はエルミート演算子(ハミルトニアン)で記述され、実数値をとるという原理がある。
ところが、複素ポテンシャルのある物理系のハミルトニアンは一般にエルミート演算子でなくなるが、実数のエネルギーをもつ 系が数多く提唱されている。最近、東京理科大の和達三樹氏は、シュレーディンガー型固有値問題で実数エネルギーを与える、 空間・時間の合成変換に対して不変な(PT対称)複素ポテンシャルの構成法を見出した。古典力学の非線形現象(ソリトン)に関する理論と関連付けた数理的手法であり、一般的かつ強力な方法として研究者の注目を集めている。


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「電子の結晶化で分極する有機強誘電体:その光学非線形性と超高速光応答」

強誘電体は、低温で巨視的な電気分極を自発的に示す絶縁体結晶であり、電気信号の記憶等に用いられるデバイスの可能性を秘めている。しかし多くの強誘電体は陽・陰イオンの偏在に基づくものであるため、電気分極の制御のためにはイオンの移動が必要であり、応答の速さに問題があった。最近、分子研の山本薫・薬師久弥の両氏と東北大岩井伸一郎氏らのグループは、有機伝導体α-(ET)2I3が、低温で電子の結晶化で分極する強誘電体であることを検証し、その光学非線形性と超高速な光応答特性を明らかにした。有機伝導体の新しい側面(超高速光誘起相転移)を示すものとして研究者の注目を集めている。
なお、本研究に関連した、相原正樹氏による解説“Ultrafast Photoinduced Phase Transition”がJPSJのNews and Comments欄 http://dx.doi.org/10.7566/JPSJNC.5.07に掲載されている。
どなたでもアクセスできるので、ご参照いただきたい。


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