JPSJ注目論文

JPSJ 2009年7月号の注目論文

「大振幅原子振動による重い電子の出現:近藤温度の逆同位体効果」

ある種の希土類化合物のf電子は、他の伝導電子と混じり合って結晶中を動き廻ることができるが、f電子に働く相互作用のため、その 運動はゆっくりしており、'重い電子'と呼ばれている。
従来、この相互作用はスピン自由度の関与するものが考えられ、'近藤効果'と呼ばれている。最近、首都大学東京の堀田貴嗣氏は、希土類原子がカゴ構造で囲まれた空間を大振幅の振動('ラットリング'と呼ばれる)が可能である、SmOs4Sb12のような希土類化合物においては、この大振幅振動がf電子を重くしている主因であることを理論的に導出した。この新しいメカニズムの証拠となるべき現象(近藤温度の逆同位体効果)が提起されており、多くの研究者の注目を集めている。
 なお、本研究に関連した、佐藤英行氏による解説 “A New Proposal to Unravel the Magnetically Robust Heavy Fermion State in SmOs4Sb12” がJPSJのNews and Comments欄http://dx.doi.org/10.7566/JPSJNC.6.10に掲載されている。
 どなたでもアクセスできるので、ご参照いただきたい。


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「軌道間相互作用とスピン間相互作用に発現する新しいタイプのフラストレーション」

希土類原子中のf電子は、スピン(磁気モーメント)自由度に加えて、軌道自由度(電荷分布が球対称からずれた'多極子'を伴う)を有し、隣接するスピン間、あるいは軌道(多極子)間に働く相互作用のため、希土類化合物は多様な物性を示す。最近、横浜国立大学の眞田直幸・綿貫竜太・鈴木和也氏の研究グループは、希土類化合物TbCoGa5において、スピン間相互作用と軌道間相互作用との競合に由来すると考えられる、2段階の磁気相転移現象を見出した。
 この新しいタイプの競合メカニズムは、希土類化合物の多様な物性探索に向けた今後の研究の指針になるものと、多くの研究者の注目を集めている。
 なお、本研究に関連した、神木正史氏による解説“Possible Occurrence of Frustration Phenomena Caused by the Competition of Multipolar Interactions in f-Electron Systems”がJPSJのNews and Comments欄http://dx.doi.org/10.7566/JPSJNC.6.11に掲載されている。
 どなたでもアクセスできるので、ご参照いただきたい。


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