JPSJ注目論文

JPSJ 2010年8月号の注目論文

「生命機能を生み出す水和水の重要な性質がわかった!」

細胞の中で、水はタンパク質など生体分子を溶かす溶媒として働くとともに、かなりの部分は水和水として存在している。従って、「水和水がタンパク質の働きとどのように関係しているのか」という問題は、単に生体分子の基礎物理として重要なだけでなく、酵素工学などバイオテクノロジーや、効率的な食品の乾燥保存法の開発などの応用科学面でも重要である。この論文では、中性子非干渉性散乱と分子動力学(MD)シミュレーションにより、タンパク質の動力学に対する水和水の影響を定量的に調べ、タンパク質の働きに必要な水和水の本質的な性質をはじめて明確に示した。


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「スピングラスとJarzynski等式の出会い」

難問をコンピュータに解かせる汎用アルゴリズムは応用上とても重要である。巡回セールスマン問題に代表されるような組み合わせ最適化問題に対する汎用的解法であるシミュレーテッドアニーリング(SA)は物理学が実社会に直接役立つ貢献をした著しい例である。この方法は、いわば、コンピュータ上の仮想的な冒険家が山を駆けずり回って,谷底にあるといわれている宝物を探してくれるといえる。冒険家の数を増やせば宝物を発見する確立は増えるが、やみくもに増やしても効率はよくならない。これを効率よく行うのが、をポピュレーションアニーリング(PA)と呼ばれる方法である。この方法は物理として見直すと,非平衡統計力学の基礎として有名となったJarzynski等式の中に一端を垣間見る事ができる.この論文では、PAをスピングラスに適用して、いくつかの厳密な関係式を得た.この関係式は後に述べるようにスピングラスの平衡状態を調べるための新たな手法としての可能性を秘めている。


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