JPSJ注目論文

JPSJ 2010年10月号の注目論文

「セメント超伝導体のカゴ内電子の直接観測に成功」

2002年に東京工業大学の細野秀雄らは、7eVのワイドギャップ絶縁体であるセメント化合物12CaO7Al2O3(C12A7)に電子伝導性を、2007年には超電導を発現させることに成功し、建材が主な用途として考えられていたセメントが、新物質/高機能物質の探索領域となる事を示した。ただし、その電子構造は実験的にはあまりよくわかっていなかったが、この研究で、超高分解能光電子分光により、理論の予想どうりである事が解明された。C12A7は可視光に対して透明な伝導体であるため、希少金属を用いる酸化インジウムスズ(ITO)に代わる透明電極としての応用に高い期待が寄せられている。鉱物資源に乏しい我が国の重要課題である元素戦略を推進するため、C12A7をモデルケースとした更なる新物質開発の進展が望まれる。


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「分子性ナノ多孔質結晶における準1次元プロトン伝導」

金ナノ空間に閉ざされた水分子は、タンパク質やDNAなどの生体物質、岩石や鉱物、燃料電池材料など多くの実用的な物質内に存在し、その構造、或いは機能性と密接に関係している。2006年、田所らは、直径約1.5 nmの1次元ナノチャンネルを有する分子性ナノ多孔質結晶[CoIII(H2bim)3] (TMA)20H2O}nnの合成に成功した。この研究では、水ナノチューブの構造的、そして、電気的な特性を調べるために、顕微赤外分光とマイクロ波電気伝導率測定を行った。その結果、燃料電池材料のナフィオンに匹敵する高い電気伝導率の観測に成功するとともに、顕著な電気伝導率の異方性を見出した。これらの測定から、規則性の高い構造を有する水ナノチューブを媒介して、準1次元的なプロトン伝導が起きることを結論した。


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