JPSJ注目論文

JPSJ 2011年3月号の注目論文

「量子消去系に潜む幾何学的位相」

光は粒子としても波動としても振る舞う。この二重性を示す実験がよく知られた二重スリット実験である。二重スリットを通った光によりスクリ?ン上に干渉縞ができるが、このような干渉縞は我々が光の経路(どちらのスリットを通ったのか)を見ると消えてしまう。粒子的な性質である経路情報を得たことにより、波動的な性質である干渉が損なわれてしまうのである。しかし経路情報を消してしまうえば、量子は波動性を取り戻し、干渉縞が再び現われる。このような現象は「量子消去」と名付けられた。最近、京都大学工学研究科電子工学専攻のメンバーから成る研究グループは、光の偏光を利用した量子消去の実験を行ない、そこに現れる「幾何学的位相」と呼ばれる位相シフト(Pancharatnam位相)との関係を明らかにした。


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「鉄系高温超伝導体で発見された非整合スピン密度波」

2008年に発見された鉄ヒ素系化合物における高温超伝導の発現機構は、反強磁性が密接に関連していると考えられている。反強磁性に似た状態として、反強磁性の磁化が空間的にサイン波のように変動するスピン密度波という状態があり得る。最近、東京大学物性研究所の研究者を中心とする研究グループは、NaFeAsの単結晶の核磁気共鳴(NMR)の詳細な実験を行い、温度を下げていくと磁気構造が非整合スピン密度波(周期が結晶の周期の有理数倍になっていない)から反強磁性状態に近づいていく様子が観測された。これは、鉄系超伝導体では初めてであり、磁性と超伝導の関係の解明に寄与すると期待できる。


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