JPSJ注目論文

JPSJ 2011年7月号の注目論文

「粘菌の輸送管ネットワークは変化自在に環境に適応する」

この10年余り複雑ネットワーク科学が注目されてきた。ネットワークの例は、動物の血管網、蟻の餌探索行列のパターン、葉脈、河の分岐、道路網、鉄道網、電力網など枚挙に遑がない。その中で生物ネットワークは進化の過程で輸送効率、ネットワークの頑強さ、ネットワーク構築のコストなどを多目的に最適化していると予想される。特に、最適化された輸送管ネットワークのモデル生物として真正粘菌変形体という巨大単細胞生物が注目されている。この研究では、様々な環境において粘菌の輸送管ネットワークの成長過程を観察・解析し、2次元ネットワーク解析に有効な特徴量を定量的に調べた。その結果、粘菌は環境に応じて全く異なるネットワークを形成する適応的能力を持つことを明らかにした。


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「超音波で計測する鉄砒素系超伝導体の電気四極子」

1911年に発見されたいわゆるBCS超伝導体は、格子振動が媒介する電子間の引力によって引き起こされる。一方、1986年に発見された酸化銅を主体とする高温超伝導では、スピンの揺らぎによる電子間の力で超伝導が起きていると考えられている。2008年に発見された鉄系超伝導ではこれに加えて電子の軌道による電気四極子のゆらぎが重要な役割を果たしていると推定されている。 この研究では、超音波で弾性定数の温度依存性を計ることにより、電気四極子のゆらぎの重要性が示唆されている。


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