JPSJ注目論文

JPSJ 2012年3月号の注目論文

磁化の歳差運動により現れる磁気モノポールの理論的発見

 磁気モノポールは、1931年にディラックによって存在の可能性が示された。大統一理論では、電磁気学の裏に潜む代数学的対称性であるゲージ対称性の破れによって磁気モノポールが出現する事が予言されているが、その生成には宇宙誕生初期に相当する巨大なエネルギーが必要となる。これまで様々な実験が行われてきたが、残念な事に今日に至るまで自然界にその存在は確認されていない。真空中とは異なり、物質中では低エネルギーでも磁気モノポールが見られる可能性が秘められている。実際、磁気構造がヘッジホッグ(はりねずみ)のような特異性を持つ磁性物質中において、電子スピンが従うSU(2)のゲージ対称性が壊れる事で磁気モノポールが現れる事が理論的に明らかにされている。しかしながら実際にこのような特殊な磁化配置の物質を作成する事は非常に困難である。最近、首都大学東京大学院理工学研究科物理学専攻の研究グループは、磁性体中にスピン軌道相互作用が働く事で、磁気モノポールが現れる新しい機構を発見した。


PDFファイル


典型的な重い電子系物質で初めて明らかになったメタ磁性と反強磁性の分離
~ミステリー・プラトーを巡って~

 水は大気圧では沸点で大きな体積の変化をともなう一次の相転移を示すが、圧力を上げていくとある圧力、温度で液体から気体へ連続的に変化する。これを臨界点と呼ぶ。同様に、物質の磁気的性質においても、不連続変化から連続変化移へと切り替わる点「磁気量子臨界終点」が物性物理研究者の注目を集めている。低温で起きるこの磁気量子臨界点の物理は、メタ磁性という物理現象によって特徴づけられる。一次相転移では磁化の増大は不連続であるが、二次相転移(あるいは連続的な変化であるクロスオーバー)のときには、磁化はなだらかな増大となる。本研究は、典型的な重い電子系物質CeRu2Si2にわずかにRhをドープした物質(CeRu2Si2-Rh)の単結晶を育成し、そのメタ磁性と反強磁性不安定点近傍の分離を初めて明らかにしたものである。純粋なCeRu2Si2は常磁性体であり、これに磁場を加えると、ある磁場(Hm)で常磁性状態からスピン分極した状態へとメタ磁性が起きる。負の圧力がかかったCeRu2Si2は反強磁性体であり、磁場を加えると、ある磁場(Hc)で反強磁性状態からスピン分極した状態へと変化する。通常、HmとHcは反強磁性磁気不安定性という同じ起源を持つために、CeRu2Si2を負の圧力から正の圧力へと変化させると、HmとHcは一致している。しかし、CeRu2Si2-RhではHmとHcが分離している。つまり、磁場を加えていくと反強磁性状態、常磁性状態、スピン分極した状態へと次々に切り替わっていく。


PDFファイル