福島原発事故に関する物理学会の取組み (2016.11作成)

(1)会員による初期の活動

2011年3月24日から3月27日に、原子力安全委員会の緊急技術助言組織の助言を受けて放射線総合医学研究所が行った、福島県の子供890 人を含む1080 人に対するヨウ素131による甲状腺被曝のスクリーニングに、原子核物理研究者も参加した。1)  この測定は、半減期が約8日間と短いヨウ素131のほぼ2半減期以内に行った測定として意義がある。
その後活動は、環境の放射能汚染の調査へとひろがり、核物理を主体とした物理学者に地球科学者が協力して、ヨウ素131を含むパイロット調査と、本格的な大規模調査へ向けてのプロトコル作成が進められた。2) それに基づき、6 月には、総合科学技術会議からの特別予算の形で、文科省主導の福島県とその近隣県の大規模な土壌サンプリング調査が行われた。3) 全国から集まった400 人以上のボランティア研究者が福島とその近隣の約2200 箇所で土壌をサンプリングし、ゲルマニウム半導体検出器を持つ機関で分析をおこなった。これにより、セシウム134 とセシウム137 の詳細な濃度マップが得られた。それだけでなく、高度の測定技術を駆使して、すでにほとんど崩壊してしまっていたヨウ素131や、ゲルマニウム検出器では測れないストロンチウム90 などの核種についてのデータも得られた。

1) 藤原 守 Radioisotopes 62 (2013) 711
2) 大塚孝治他 Radioisotopes 62 (2013) 752
3) Radioisotopes 62 (2013) No.10
http://www.cns.s.u-tokyo.ac.jp/publish/fukushima/RadioIsotopesOct2013.pdf


(2)本会主催シンポジウム・講演など(一般市民、学会員対象)

 
2011.6.10シンポジウム(立教大)
「物理学者から見た原子力利用とエネルギー問題」
2011.9.16~192011年秋季大会(素核宇、弘前大)
素粒子実験領域・実験核物理領域合同企画講演会(9.17)
 「東日本大震災後のJ-PARC復興計画」
2011.9.21-242011年秋季大会(物性、富山大)
領域13 物理教育シンポジウム(9.23)
 「福島原発事故に際して科学教育の在り方を問い直す」
2012.3.24~27 第67回(2012年)年次大会(関西学院大)
領域1シンポジウム(3.24)
 「放射線が生体に与える影響-原子分子から生物まで-」


物理と社会シンポジウム(3.24)
 「福島原発事故から1年:これまでとこれから」


領域11、領域12 合同シンポジウム(3.25)
 「室内実験とシミュレーションから地震の複雑性にどこまで迫れるか?
:2011年3月11日以降」


実験核物理領域・理論核物理領域合同企画公演(3.25)
 「福島原発からの放射性物質の測定」


物理と社会シンポジウム(3.26)
 「福島原発事故と物理学者の社会的責任」

2012.9.18~212012年秋季大会(物性、横浜国大)
領域13、領域1、領域10、領域12 合同シンポジウム(9.19)
 「これからのエネルギーと原子力発電」
2012.11.32012年公開講座(東大本郷)
「放射線を知る ~基礎から最先端まで~」
2013.3.26~29第68回(2013年)年次大会(広島大)
・実験核物理領域、理論核物理領域、領域1 合同チュートリアル講演(3.26)
「内部被ばくの放射線計測学」 早野龍五(東大理)
物理と社会シンポジウム(3.28)
「物理学者と原子力政策」
2014.3.27~30  第69回(2014年)年次大会(東海大湘南キャンパス)
物理と社会シンポジウム(3.28)
「3年後の福島~今どうなっているのか~」

物理と社会シンポジウム(3.29)
「福島第一原発事故への学術の関わり~3年間の活動と今後」
2015.3.21~24 第70回(2015年)年次大会(早稲田大)
物理と社会シンポジウム(3.22)
「パグウォッシュ会議2015年長崎開催に向けて」

(3)「放射線測定データアーカイブズ」活動

 東京電力福島第一原子力発電所事故に関わる放射線測定データは、重要なデータとして人々に共有され、後世に残されるべきである。そのためには、様々な形で散在するデータの散逸、消失から守るための長期的な保全措置を講じる必要があり、それらのアーカイブズを作成する活動に日本物理学会は当初から主導的役割を果たしてきた(斯波弘行会長、伊藤好孝理事)。現在は日本学術会議が主導するワーキンググループに担当理事ならびに会長(副会長)が参画している。それらの経緯は次のとおりである:

2012.7理事会で福島第一原発事故の放射線測定データアーカイブについて検討開始。ワーキンググループ立ち上げ。
2012.9日本アーカイブズ学会と合同で「放射線アーカイブズ拡大ワーキンググループ」を立ち上げ。福島第一原発事故に関わる放射線測定データに関して、メタデータの収集と保全の枠組みについて共同で検討を開始。
2013.9日本学術会議(第22期)総合工学委員会原子力事故対応分科会の「原発事故による環境汚染調査に関する検討小委員会」下の「初期被ばく関連データ発掘・収集ワーキンググループ」と合同し、「東京電力福島第一原子力発電所事故に関する放射線・放射能測定データアーカイブズワーキンググループ」発足。
2013.11.1アーカイブズ学会・物理学会両学会長連名により、放射線測定データのアーカイブ化の重要性と測定データの保全を訴えるための声明発表。
2015.4日本学術会議(第23期)総合工学委員会原子力事故対応分科会の「原発事故による環境汚染調査に関する検討小委員会」の下に「東京電力福島第一原子力発電所事故に関する放射線・放射能測定データアーカイブズワーキンググループ」再設置。
2015.8.14第1回 WG開催(学術会議)
    委員長:伊藤好孝(現名大・宇宙地球環境研究所)
    幹 事:高橋知之(京大・原子炉実験所)
    委 員:22名(本会から櫻井博儀理事/理研・東大)
    オブザーバー:3名(本会から藤井保彦会長・柴田利明副会長/東工大)
2015.12.22第2回 WG開催(学術会議)
2016.3.18第3回 WG開催(名大東京オフィス)
2016.10.6第4回 WG開催(名大東京オフィス)
    委員長:伊藤好孝(現名大・宇宙地球環境研究所)
    幹 事:高橋知之(京大・原子炉実験所)
    委 員:22名(本会から永江知文理事/京大)
    オブザーバー:2名(本会から藤井保彦会長)

WGの最新情報

(4)「福島復興・廃炉推進に貢献する学協会連絡会」活動

 本連絡会は、東京電力福島第一原子力発電所事故に関連する活動について、学協会が相互に情報交換を行い連携協力することにより、福島復興と廃炉推進に貢献する活動の一層の効果的・効率的な実施・推進を図ることを目的として、日本原子力学会の呼び掛けにより32学協会が賛同して2016年5月20日に設立された。
 日本物理学会では、日本原子力学会が福島原発事故4年目を迎えて特集した「原発事故から4年―いま問われる『知の統合』、福島原発事故に対する各学会の取組み」(同学会誌ATOMO ∑ Vol.57, No.3 (2015))に、当時の兵頭俊夫会長が寄稿したことが契機になり、次のような経緯を経て参画している。
2015.12.21準備会開催(新橋)
2016.5.20第1回全体会開催(新橋)
2016.8.2第2回全体会開催(新橋)
 活動としては、主に廃炉推進のオンサイトと福島復興のオフサイトに関わる部分に大別しているが、日本物理学会は当面後者に関する情報交換を主に行う。
  ⇒ 詳しい活動の情報