日 本 物 理 学 会

May, 2001


「日本技術者教育認定機構」正会員への加入および
「物理・応用物理学関連分野」発足について


  1. 日本物理学会は4月1日を以て「日本技術者教育認定機構(Japan Accreditation Boad for Engineering Education:JABEE)」に正会員として加入致しました。
  2. 「物理・応用物理学関連分野」が新たに今年度より発足いたしました。
  1. はじめに
    加入に至る経緯については

    1. 本学会の多くの会員が大学・企業の工学関係の教育に関わっており,工学教育の基礎としての物理教育に関心がある。
    2. 本学会として大学の「物理関連学科」の教育とそこでの卒業生に対する保証をする。

    という考えに基づいてJABEE発足の準備段階より関わりを持って参りました。特に「2」に関しては,我が国の高い技術水準を支えている人材として,「物理学科」や「応用物理学科」等の多くの卒業生を企業等のいわゆる技術者として数多く送り出していてることを考えるとJABEEに無関心ではいられません。その一方で,JABEEが米国のABET(Accreditation Board for Engineering and Technology)などを母体としたWashington Accord(WA)への加盟を目指した機構であり,これまでの加盟各国の工学分野には「物理関連」という分野が存在しないことから,このままでは「物理学科」や「応用物理学科」など「物理関連」の卒業生に保証を与えることができないという問題を抱えていました。

     これに関しては,ひとまず先にJABEEの幹事学会となった,同じ問題を抱える応用物理学会と共同して物理・応用物理関連学会に呼びかけ,JABEE側からの要請とも相まって「物理・応用物理関連学会協議会」を立ち上げ,「物理・応用物理学関連分野」を発足させることができました。

     ここでは,これまでの大学の物理教程を修習する学科ないしコースが認定の対象となります。これは技術のあらゆる分野において物理の果たしている役割を考えれば当然のことであると考えています。

  2. 「物理・応用物理学関連分野」教育プログラム認定試行に対する募集
     「物理・応用物理学関連分野」が発足したことに伴い,早速,試行を希望される大学を募集いたします。奮って応募されることを期待いたしております。ご希望,ご関心の向きは遠慮なく事務局あてにご連絡下さい。  なお,JABEEについての詳細な情報は

    http://www.jabee.org/

    に掲載されていますのでご参照下さい。 なお,V〜Yに参考となる資料を掲載いたします。

  3. 分野別要件−物理・応用物理学関連分野−(Ver.1.0)
     以下の要件は、物理・応用物理学関連分野の技術者教育プログラムに適用されるものです。このVer.1.0に書かれている内容はJABEEのHomePageで公開されるものです。
    1. 教育内容
      本プログラムの修了生は以下の能力・技術を身につけている必要がある。
      1. 基礎能力
        1. 数学(微積分学、線形代数学、ベクトル解析、物理数学)、物理学(力学、電磁気学、熱物理学、量子物理学)、基礎実験、情報科学に関する基礎基礎知識および基礎技術。
        2. a.を駆使して課題を理解し、的確に解決して、それらを適切に表現し、その内容を正しく伝達できる基礎能力。
      2. 専門能力
        本分野の主要領域(物理・応用物理一般、物性・材料、物理情報計測、エレクトロニクス・素子)のうち少なくとも1領域に関する下記の能力。
        1. 各領域に対するプログラムの設定目標実現に必要な専門科目を系統的に修得した専門知識及び専門技術。
        2. a.の知識・技術を駆使して課題を探求し、的確に解決する能力。
        3. 本分野に携わる専門技術者が経験する実務上の課題を理解し、的確に解決して、それらを適切に表現し、その内容を正しく伝達できる能力。
    2. 教員
      1. 教員団は、プログラムの設定目標実現に要求される本分野の関係するカリキュラムに関して教える能力を有する教員で組織されていること。

  4. 物理・応用物理学関連分野分野別要件補足説明(案)
     これ以下については物理・応用物理関連連絡協議会のこれからのWGでよりつめたものにまとめていく予定のものです。ただ,これによりこの分野の基本的な要件をつかみ取ることができると思います。

    「1教育内容」では物理・応用物理学関連分野の教育プログラムに含まれる講義・演習・実験などを基礎能力と領域別専門能力に分類している。以下にその内容を例示し補足説明とする。

    1. 基礎能力
      本プログラムの修了生は共通に以下の基礎知識・基礎技術が備わっていること。
      数学(微分積分学、線形代数学、ベクトル解析、物理数学)
      物理学(力学、電磁気学、熱物理学、量子物理学)
      基礎実験
      情報科学
    2. 専門能力
      本プログラムの修了生は以下の4つの領域の内の少なくとも1領域に対して、以下に示す専門知識・専門技術が備わっていること。
      1. 必須として修得すべき能力
        1. 物理・応用物理一般領域 応用数学、物理・応用物理学、力学・応用力学、電磁気学・応用電磁気学
        2. 物性・材料領域 応用量子力学、固体物理学、物性物理学、物理計測工学
        3. 物理情報計測領域 物理計測工学、光学・応用光学、センサー工学、電子回路工学、
        4. エレクトロニクス・素子領域 固体物理学、材料工学、デバイスエ学、電子回路工学、
      2. プログラムの目標達成実現に適したものを以下の中から選択して系統的に修得していることが望まれる能力。

        応用数学、物理・応用物理学、計算機数学、計算物理学、情報処理学、
        力学・応用力学、流体力学、弾性体力学、振動・波動物理学、
        電磁気・応用電磁気学、電磁波工学、光学・応用光学、センサー工学、
        放電・プラズマ物理学、熱・赤外線物理学、
        光・量子エレクトロニクス、レーザー工学、放射線物理学、エネルギー変換工学、
        熱統計・応用統計力学、
        量子・応用量子力学、応用量子物理工学、
        宇宙科学、航空科学、
        宇宙線物理学、素粒子物理学、原子力工学、原子核工学、低温物理学、高温物理学、真空工学、高圧工学、環境科学、気象学、
        プロセス工学、システム工学、
        化学・応用化学、無機化学、有機化学、物理化学、電気化学・高分子化学、
        生物学・応用生物学、生物物理学、細胞工学、生物システム工学、遺伝子工学、
        物性物理学、固体物理学、誘電体・磁性体材料物理学、材料工学、
        ソフトマテりアルの物理学、半尊体工学、結晶構造解析学,表面界面物理学,
        光物性物理学、光材料工学、
        通信工学、電子工学、電子回路工学、デバイス工学、
        集積化電子工学(トランジスター回路、OPアンブ回路・集積回路)
        物理情報工学、計算機応用工学、信号処理工学、制御工学、電気機器工学,
        物理・応用物理学実験,応用電子実験、
        設計・製図学、専門英語、工場実習、卒業研修、等

  5. 日本技術者教育認定基準(案)(2001年4月2日基準・審査委員会承認)
     審査基準については表題のごとく「案」ですが,ほぼこの線で行われるものと思います。

     この認定基準は、技術業(数理科学、自然科学および人工科学等の知識を駆使し、社会や環境に対する影響を予見しながら資源と自然力を経済的に活用し、人類の利益と安全に貢献するハード・ソフトの人工物やシステムを研究・開発・製造・運用・維持する専門職業)に携わる専門職業人(技術者)を養成する高等教育機関における教育を認定するために定めるものである。認定を希望するプログラムは下記の基準を全て満足していることを証明しなければならない。

    基準1 学習・教育目標

    1. 自立した技術者に必要な下記の知識・能力を全て網羅した具体的な学習・教育目標が設定され、公開されていること。
      1. 地球的視点から多面的に物事を考える能力とその素養
      2. 技術が社会および自然に及ぼす影響・効果に関する理解力や責任など、技術者として社会に対する責任を自覚する能力(技術者倫理)
      3. 数学、自然科学、情報技術に関する知識とそれらを応用できる能力
      4. 該当する分野の専門技術に関する知識とそれらを問題解決に応用できる能力
      5. 種々の科学・技術・情報を利用して社会の要求を解決するためのデザイン能力
      6. 日本語による論理的な記述力、口頭発表力、討議などのコミュニケーション能力および国際的に通用するコミュニケーション基礎能力
      7. 自主的、継続的に学習できる能力
      8. 与えられた制約の下で計画的に仕事を進め、まとめる能力
    2. 当該高等教育機関の伝統、資源、卒業生の活躍分野などを考慮して特色を出す努力がなされていること。
    3. 学習・教育目標が社会の要求や学生の要望を考慮して決定されていること。

    基準2 学習・教育の量

    1. 当該プログラムの修了生は、4年間に相当する学習を行い、124単位以上を取得し、学士の学位得ていること。
    2. 当該プログラムの修了生は、総学習保証時間(講義、実験、演習、実習などで教員と接している時間と研究室等で勉学、研究などをしていることが証明できる時間の和):2,000時間以上の学習・教育時間を経ていること。また、その内300時間以上の人文科学、社会科学等(語学教育を含む)、300時間以上の数学、自然科学、情報技術および1,000時間以上の専門技術に関する学習・教育時間を含むこと。

    基準3 教育手段
    3.1 入学者選抜方法

    1. 学習・教育目標を達成するために必要な資質を持った学生を入学させるための具体的な選抜方法が公開され、実施されていること。
    2. 他の高等教育機関等から学生を編入させる場合には、その具体的な選抜方法が公開され、実施されていること。
    3. 他の高等教育機関等からの編入生が他の高等教育機関等で取得した単位の互換性を確認するプロセスが公開されていること。
    3.2 教育方法
    1. カリキュラムは学習・教育目標を達成するよう設計され両者の対応が公開されていること。
    2. カリキュラムの設計に基づいて作成されたシラバスには、各科目の位置付けを十分に意識した学習・教育内容とその教育方法および成績の評価方法が公開され、実施されていること。
    3. 学生が他の高等教育機関等で取得した単位の互換性に対する評価方法が公開され、実施されていること。
    4. 教育方法に関して、学生の理解を助け、勉学意欲を増進し、学生の要望にも配慮するシステムとプロセスが公開され、実施されていること。
    3.3 教育組織
    1. 学習・教育目標を達成するために設計されたカリキュラムを適切な教育方法によって展開し、教育効果をあげうる能力をもった十分な数の教員と教育支援体制が存在していること。
    2. 教員の質的向上を図る仕組み(ファカルティ・ディベロップメント)が公開され、それに関する活動が実施されていること。
    3. 教員の教育に関する貢献の評価方法が公開され、実施されていること。
    4. カリキュラムに設定された科目間の連携を密にし、教育効果を上げ、改善するための教員間連絡ネットワーク組織が公開され、機能していること。

    基準4 教育環境
    4.1 施設、設備

    1. 学習・教育目標を達成するにふさわしい教室、実験室、演習室、図書室、情報関連設備、自習・休憩設備、食堂などが整備されていること。
    4.2 財源
    1. 学習・教育目標を達成するにふさわしい施設、設備を整備し、維持・運用するのに必要な財源確、保への取り組みが公開され、実施されていること。
    4.3 学生への支援体制
    1. 教育環境に関して、学生の勉学意欲を増進し、学生の要望にも配慮するシステムとプロセスが公開され、実施されていること。

    基準5 学習・教育目標達成度の評価と証明

    1. 教員の立場から、学習・教育目標がどの程度達成され、どこまで教育成果が上がっているかを定量的に評価するための評価基準が作成され、それに基づく評価が実施されていること。
    2. 学生にも学習・教育目標に対する自分自身の達成度を評価させ、学習に反映させていること。
    3. その他の方法(外部試験、修了生へのアンケート、修了生の就職状況、就職先からの評価などが考えられる)を含む総合的な達成度評価が行われていること
    4. 学習・教育目標の総合的な達成度を判定する評価基準を満たした学生のみを当該プログラムの修了生としていること。

    基準6 教育改善、
    6.1 教育点検システム

    1. 学習・教育目標達成度の評価に基づいて学習・教育目標を見直し、教育手段、教育環境等を改善し、継続的向上を図るための教育点検システムとプロセスが公開され、実施されていること。
    2. 教育点検システムを構成する会議や委員会が、社会の要求や学生の要望を反映できる適切な構成であること。
    3. 教育点検システムを構成する会議や委員会等の恒常的な活動記録が公開されていること。
    6.2 継続的改善
    1. 学習・教育目標達成度の評価に基づいて学習・教育目標、教育手段、教育環境、学習・教育目標達成度の評価方法、教育点検システムを改善してゆくための具体的かつ継続的な方策が講じられ実施されていること。

    分野別要件 当該分野での学習・教育目標を達成するために必要な教育内容(主として基準のI一(d)に対応する知識と能力)および教員(団)について具体的な規定をするものである。

  6. 「物理・応用物理関連学会協議会」呼びかけ
     JABEEでの新しい分野を発足させるため連絡協議会結成へ呼びかけたときの文書です。なお,参加諸学会は(社)日本物理学会と(社)応用物理学会の他,2001年4月現在,(社)可視可情報学会,(社)日本応用磁気学会,(社)日本音響学会,(社)日本電子顕微鏡学会,低温工学協会,日本真空協会,日本色彩学会,(社)日本航海学会,(社)日本セラミクス協会,日本赤外線学会,原子衝突研究協会,日本科学史学会,です。

    2000年○月○日
    ○○学会
    会長○○殿

    社団法人 応用物理学会
    会長 松村正清
    社団法人 日本物理学会
    会長 佐藤文隆

    応用物理学関連学協会間「日本技術者教育認定制度」連絡協議会の結成と参加勧誘

    拝啓時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。

    日本技術者教育認定制度についてはご承知のことと存じますが、このたび、応用物理学会はその実施団体である日本技術者教育認定機構(JABEE)へ加入しました。また、日本物理学会は同機構への入会を申請しています。
    JABEEでは,当面は国際協定であるワシントンアコードヘの加盟を目指して、米国の実施機関であるABETと整合する分野(機械、電気、土木、化工など)から認定作業を立ち上げる予定ではあるが,やがては日本固有のもの(化学関連、物理学関連など)をも分野として立ち上げることが望ましいと考えているようです。また、JABEEは、その認定活動などに際して、関連学協会が協力しあうことを期待しているようです。

    日本物理学会と応用物理学会は、認定制度自体についての議論を尽くしたとは言えませんが、関連学術分野がこの認定制度から取り残される事態は避けたいと考えています。さらに、上記のJABEEの取り組み方は、我々にとっても望ましいことと考えます。両学会以外の当該分野に関連する学協会も同様なご意向であろうと推察しています。

    そこで、物理学に関連する学術分野を専門とする諸学会間にて、この認定制度について連絡と相談のための組織を結成したいと存じます。


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