日 本 物 理 学 会

2005世界物理年によせて
ご協力ありがとうございます
−企画「子供たちに物理の楽しさを」; 経過と進展−

久 保 謙 一 [ 2005世界物理年委員会委員 e-mail: ]
[日本物理学会誌 Vol.59 No.11(2004)掲載]


2005世界物理年委員会 (WYP2005-JPS)では、催しの一つである月刊誌「子供の科学」(誠文堂新光社)との共同企画を進めています。子供たちが、「これは面白い」、「こうなっていたのか」と、物理の現象、原理、応用などに実感を持って触れ、楽しむ機会を作るのが企画の狙いです。このために、本会員の皆さんに実験等のテーマの提案をよびかけてきました。

経過の報告
第1期募集(平成16年 6 月18日まで)には、短期間にもかかわらず6件、10テーマと1コメントが寄せられました。企画の実施は、 WYP2005-JPS 内に「実行委員会」を設置して、提案の検討、採否判断、原稿依頼、編集作業と行っています。10テーマのうち6テーマが今回の企画に適当と判断されました。そのうちの2テーマを一先ず掲載すべく原稿依頼、編集を行ってきました。「子供の科学」10月号(9 月10日発売)から、夏目雄平さん(千葉大・理)の「静電気で塩胡椒を分離してみよう」を第1号、続いて村上明さん(佐賀大・名誉教授)の「無重力の状態を作り観察しよう」(本稿執筆時仮題)と連載が始まりました。会員の皆さんには、当誌を手にとってご覧いただくようお願いします。第1期にご提案いただいたテーマは、いずれも魅力的なものでしたが、対象読者、2ページ限定等の条件から、全部は採用に至りませんでした。採用されなかった方には、大変失礼いたしました。
本原稿執筆時は、第2期の提案が到着しているところです。第3期締め切りは新年1 月14日です。締切日を待たず、提案到着次第手続きを踏んでいきますので、何時でも早めにご提案をお願いいたします。

本企画のより効果的実施のために
子供たちから、実験後の感想を寄せてもらうために、 WYP2005-JPS内にe-mail postを設置しました。素晴らしい実験、発想、工夫などをした子供たちを、さらに励ますことができればと考えています。その節は、本会員の皆さんの協力をお願いすることになります。それには、経費予算ゼロでは困難と考え、委員会では予算の獲得を努力しているところです。

新企画「子供たちに物理科学への機会を」
小生はたまたま機会があって、都心から離れたある山村に出かけています。この村の中学校で(この秋から小学校でも)、「科学教室」 を開き、 物理、 科学、技術に関する話や実験を行っています。今年は理科の先生が着任したのですが、それ以前は数学の先生が理科も担当していました。山村なので自然や植物、生物にふれる機会は豊富ですが、物理、化学の分野の授業では実験を見る機会はなく、教科書と先生の話を憶えることで終始していると見受けられます。理科の時間数も減少する中で、わくわくするような物理の現象や新発見・新発明の話に触れる機会がほとんどないままに15歳までを過ごしている印象をうけます。都市部の子供たちには何気なく入ってくる情報も、地方、山村となると状況は随分と違うように思います。そこで、小生の関係している村の周辺地域6市町村の中学生を対象に、教育委員会と連携して2005WYPを機会に「科学教室」を開催することを企画し、予算の獲得に努力しています。

物理学会支部の役割
一方で、地域にはユニークな産業や企業、大学、研究所もあることでしょう。また、物理、科学、技術、教育などの分野で活躍された経験豊かな方もおられるでしょう。そういう特色を捉えて、地方でもいろいろな2005世界物理年を企画実施していただき、子供たちに理科がすきになる機会を与えることができればと考えます。 その一つとして、本会支部組織の活動が行われることは実際的な成果を上げ得るものと期待されます。今年3月の年会で、各支部の活動が報告され、理科離れを防ぐ啓蒙活動への取り組みの情報が交換されました。 支部の2005WYPへ向けた精力的な活動の展開も始まろうとしており大いに期待したいと思います。

2005世界物理年の意義
冒頭の企画を進めるなかで感じたことは、理科離れの危機意識の下であれ、物理教育の回復進展の狙いであれ、自治体・団体の特色を出す狙いであれ、日本中でいろいろな啓蒙活動が行われていることです。にもかかわらず、理数科目の勉強は大切だと考える高校生は1割から2割という統計があり(2004年文科省発表)、高度最先端の科学技術のもたらす恩恵を受けていながら、人々は科学技術がますます縁遠いものになったと感じ(「2004年科学技術白書」)、科学技術が悪用誤用される危険性が増えると考える人が8割を超え (「2004年内閣府第 6 回科学技術と社会に関する世論調査」)、ノーベル賞連続受賞も効果なく、日本人の科学への関心はさらに低下と揶揄されています(「NATURE」誌2004年4月3週号)。結局は地道な積み上げと、機会を捉えての盛り上げで、努力していくことではないかと思います。その機会の一つが、世界中で取り組むこの稀な「2005WYP」ではないでしょうか。
(2004年9月13日原稿受付)