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米沢賞

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第7回(2026年)米沢富美子記念賞の受賞者を以下の4名に決定しました。

第7回(2026年)米沢富美子記念賞の受賞者を以下の4名に決定しました。
(受賞当時の所属先を掲載しております)

授賞理由

授賞理由及び選考経過報告の著作権は日本物理学会に帰属します。HP等にご転載をご希望の場合は、日本物理学会事務局・米沢富美子記念賞担当(yonezawasho-s@jps.or.jp)までお問い合わせください。

※50音順/敬称略

氏 名
梅垣 いづみ(うめがき いづみ)
所属先 高エネルギー加速器研究機構 ・ 助教
業績名 ミュオンビームのリチウムイオン電池への応用
授賞理由

梅垣いづみ氏は、ミュオン特性X線を用いた非破壊元素分析およびミュオンスピン回転緩和(μSR)法を駆使し、リチウムイオン電池の高度解析において独創的な研究を展開するとともに、産業応用や学際研究も含めた国内外でのミュオンビームの活用を牽引している。

ミュオン特性X線を用いた元素分析では、電池内部のリチウムと電極に析出する金属リチウムの捕獲特性の違いに着目し、従来困難であった電池動作下における析出リチウムの非破壊検出・定量評価を実現した。本手法は、リチウムイオン電池のリサイクルや品質向上に大きく貢献することから、世界的に評価されている。また、μSR法を用いた研究では、世界で初めて、実用電池材料である負極グラファイト中のリチウムイオンの拡散を明らかにし、物性分野にとどまっていた本手法の有用性を化学分野へ広く普及させる道筋を切り拓いた。

このように、梅垣氏はその活躍が国内外で認められ、ミュオンビームの有用性やμSRの新規適応法を広く提示してミュオン科学の進展に大きく貢献していることから、米沢富美子記念賞の受賞に値する。

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氏 名
Elisa Gouvea Mauricio Ferreira(エリサ ゴウベア マウリシオ フェレイラ)
所属先 東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構・特任助教
業績名 天体観測に基づく宇宙ダークセクターの素粒子物理の研究
授賞理由

宇宙の観測から、ダークマターおよびダークエネルギーの存在が明らかになっているが、それらの本質的な性質はいまだ解明されていない。しかし、これらの成分は宇宙の構造形成や将来の進化において本質的な役割を果たしている。ダークマターおよびダークエネルギーの性質を説明するため、これまでに数多くの候補が提案されてきた。Ferreira 博士は、この中でも超軽量ダークマター、アクシオン、ならびに動的ダークエネルギー模型を主な対象として研究を行っている。

極めて軽い暗黒物質(m<10-21eV)が、天文学的スケールの効果をもたらすことに着目して、理論と観測を結びつける枠組みを構築し、新たな観測手法と解析戦略を提案し、矮小銀河や重力レンズ効果などの小スケール観を用いて厳しい制限を導出した研究は、素粒子物理と天体学的痕跡を結びつけるもので高く評価できる。また統計解析手法の高度化を通じて宇宙論的テンションの理解を深化させ、国際的研究に広く影響を与えていることも評価できる。これらの功績は、今後のダークセクター研究の発展に大きく寄与するものであり、本賞の受賞にふさわしい。

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氏 名
廣島 渚(ひろしま なぎさ)
所属先 横浜国⽴⼤学・准教授
業績名 宇宙物理学的手法を用いた暗黒物質の理論的研究
授賞理由

廣島渚氏は、現代物理学における重要な未解決問題のひとつである暗黒物質に関して、宇宙物理学と素粒子物理学にまたがる独創的な理論研究を展開している。

宇宙における暗黒物質探査の上で重要な鍵の一つが、暗黒物質ハローの理解である。廣島氏は、宇宙における暗黒物質ハローのサブ構造の進化をモデル化する解析的方法を開発した。地球サイズから銀河団のハローに至るまでの様々なスケールでの N 体シミュレーションの結果と比較することで、廣島氏が提案したモデルが任意のホスト質量や赤方偏移に対して有効であり、様々なスケールにおいて数値シミュレーションと一致することが示されている。この手法を応用することで、暗黒物質の反応に起因した標準理論粒子の観測を通じた探査における不定性の低減や、新たな宇宙論探査が可能となる。他にも、IceCube で観測されたニュートリノスペクトルの形状を、独立なガンマ線観測と整合的に説明する重い暗黒物質モデルを提案するなど、境界領域において幅広い成果をあげている。

また廣島氏は、国内外の研究者に呼びかけて「暗黒物質ワーキンググループ」を組織し定期セミナーや国際学会を開催するなど、天体素粒子物理学における暗黒物質研究の若手リーダーの一人として活躍している。このように廣島氏は、暗黒物質の理解を宇宙・素粒子の両方の観点から深め、日本の暗黒物質研究を率先して推進する人物であり、米沢富美子記念賞に値する。

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氏 名
藤野 智⼦(ふじの ともこ)
所属先 横浜国⽴⼤学・准教授
業績名 分⼦軌道デザインを基盤としたオリゴマー伝導体の創製:電⼦相関制御型電⼦機能物質の開発と物性研究
授賞理由

藤野智子氏は、分子性半導体・伝導体の機能物性創出において顕著な成果を挙げてきた研究者である。有機化学のバックグラウンドを生かし、分子内軌道や分子間相互作用を精密に制御することで電子物性を変化させ、新たな機能を発現させる研究を継続的に展開してきた。

具体的には、オリゴマー型有機分子を系統的に合成し、鎖長の調整によって電子間相互作用の強さを制御することで、真性モット絶縁体から金属への連続相変化を実現した。また、電荷移動錯体を対象とした研究では、軌道エネルギーや対称性の操作により、交互積層型電荷移動錯体の高伝導化を達成している。さらに、水中でマクロな動的挙動を示す常磁性材料や、安定で塗布形成が可能な両極性半導体など、将来の発展が期待される成果も多数挙げている。

このように藤野氏は、有機化学と物性物理を融合した新物質設計と機能創出の研究により、電子物性のフロンティアを切り拓いてきた。多くの共同研究を通じて学際領域を牽引し、分野融合の重要なハブとしても大きく貢献しており、日本物理学会米沢富美子記念賞の受賞にふさわしい業績を有する。

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第7回(2026年)日本物理学会 米沢富美子記念賞選考経過報告

日本物理学会第7回米沢富美子記念賞選考委員会 *

2025年5月の理事会で第7回米沢富美子記念賞の選考委員会委員10名が決定された。同年6月30日より領域・支部等に受賞候補者の推薦を求め、10月22日の締め切りまでに6名の推薦を受けた。昨年までの選考委員会から繰り越された5名を加えた11名の候補者の各々について10名の委員が推薦書、業績リスト、主要論文の閲読を行い、閲読結果を選考委員会内で共有した。2025年12月19日の選考委員会では10名の選考委員により受賞候補者の選考を進めた。各候補者について、研究業績の卓越性、インパクトの大きさや将来の展望、候補者の貢献度について詳細に検討を行った。また、物理学教育・アウトリーチ活動の状況や本会活動をはじめとする日本の物理学研究活動への貢献などについても検討した。慎重に議論を進めた結果、上記4名の候補者が第7回米沢富美子記念賞の授与にふさわしいとの結論を得て理事会に推薦し、2025年1月の理事会で正式決定された。2022年以降候補者は安定して10名以上推薦されており、今後とも、多くの優れた女性研究者の推薦・応募を期待する。

*第7回米沢富美子記念賞選考委員会

委員会委員メンバーは表彰式後に公開