JPSJ

Journal of the Physical Society of Japan (JPSJ)は、日本物理学会が刊行する月刊誌で、創刊以来、レベルの高い論文を出版してきました。各号は、Full Papers, Letters等のオリジナル論文から構成され、随時、Invited Review Papers, Special Topicsを掲載しています。最新の論文は、オンライン公開後、約1か月間無料でご覧いただけます。[> JPSJホームページ]

注目論文 (Papers of Editors' Choice)

  • 毎月の編集委員会では、注目論文(Papers of Editors' Choice)を選んでいます。その日本語による紹介文を日本物理学会誌とJPSJ注目論文に掲載しています。注目論文はオンライン公開後1年間無料で閲覧できます。関連した話題についての解説がJPSJホームページの「News and Comments」覧に掲載される場合もあります。

JPSJニュースレター

  • 年次・秋(春)季大会の開催にあわせてニュースレター(日本語)を発行しています。
    JPSJニュースレター最新号(No. 40) をウェブ公開しました。

    また、これまでに発行したニュースレターはこちらからご覧いただけます。

最新のJPSJ注目論文

銅酸化物高温超伝導体の中でも最も高い超伝導臨界温度(Tc)を持つHgBa2Ca2Cu3O8+δ(Hg1223)は魅力的な研究対象である。しかし、毒性があり蒸気圧も高いHgを含むことや、Hg1223相が化学的に不安定であることから、良質な単結晶を再現性良く得ることは容易ではなかった。本研究では、Hg1223単結晶を再現性良く育成する方法の確立を目指し、出発原料、化学組成比、温度条件の最適化を行った。また反応容器を工夫することで安全性も確保した。その結果、Hgの一部をReで置換した(Hg,Re)1223について、大きさが1×1 mm2程度の単結晶を再現性良く得ることに成功した。

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原論文は以下からご覧いただけます
Single-Crystal Growth and Characterization of Cuprate Superconductor (Hg,Re)Ba2Ca2Cu3O8+δ
Yutaro Mino, Shigeyuki Ishida, Junichiro Kato, Shungo Nakagawa, Takanari Kashiwagi, Takahiro Nozue, Nao Takeshita, Kunihiro Kihou, Chul-Ho Lee, Taichiro Nishio, and Hiroshi Eisaki, J. Phys. Soc. Jpn. 93, 044707 (2024).



ミュオンスピン緩和法(µSR)では、スピン偏極したミュオンを物質中に注入することで内部磁場の分布やその時間的な揺らぎを観測することができる。しかしながら、揺らぎについてはその原因がミュオン自身の運動なのか、それとも内部磁場の起源である磁気モーメントを持つイオンの運動なのかを区別するのは難しいと考えられていた。今回、スピン緩和を記述する前提である「強衝突モデル」を見直すことで、揺らぎの原因の違いが緩和関数の違いとなって現れることが見出された。これによって、µSRデータのみで内部磁場の揺らぎの原因を区別する道が開かれたといえる。

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Distinguishing Ion Dynamics from Muon Diffusion in Muon Spin Relaxation
Takashi U. Ito and Ryosuke Kadono, J. Phys. Soc. Jpn. 93, 044602 (2024).

温度勾配からスピン流を生成する代表的な方法であるスピンゼーベック効果の研究は、2008年の発見以来、多彩な磁性体において展開されている。反強磁性体は最も基本的な磁性体の1つであるにもかかわらず、そのスピンゼーベック効果に関する既存の理論は現象論的な側面が強く、微視的理解は十分深化していない。本研究では、反強磁性体のミクロなハミルトニアンを出発点として、スピン波理論と非平衡Green関数法に基づいた熱的トンネルスピン流の定量評価にはじめて成功し、その解析から、実験で観測されるスピンフロップ転移前後でのスピン流の符号反転、低温におけるスピン流の非単調な磁場依存性、スピン流と中性子散乱スペクトルの定量的関係、などについて統一的な解説と予言が導かれている。

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原論文は以下からご覧いただけます。
Microscopic Theory of Spin Seebeck Effect in Antiferromagnets
Keisuke Masuda and Masahiro Sato, J. Phys. Soc. Jpn. 93, 034702 (2024).

カイラルフォノンは,結晶中の原子による微視的な回転運動に対応し,角運動量を持つ.先行研究でフォノンの持つ角運動量が電子のスピンや電荷へ変換され,スピン磁化や電流が誘起されることが示されている.本研究では,これを磁性体へ拡張し,強磁性体や反強磁性体におけるカイラルフォノンからマグノン励起への変換現象を断熱近似に基づいたモデル計算で調べている.その結果,カイラルフォノンによる幾何的な効果によってマグノン数が増えたり,減ったりすることを明らかになった.


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原論文は以下からご覧いただけます
Conversion of Chiral Phonons into Magnons in Ferromagnets and Antiferromagnets
Dapeng Yao and Shuichi Murakami, J. Phys. Soc. Jpn. 93, 034708 (2024).

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