概要

日本物理学会について

日本物理学会(学会)は広く国内外の物理学の研究者・教育者・技術者約16,000名を擁する組織です。会員の研究成果を内外に発表し、また会員の研究上の便宜をはかることを目的として、さまざまな活動を行っています。2020年現在で会員の約48%が大学、12%が公的研究機関、10%が民間企業に所属しており、大学院生を含む学生の割合は約15%です。

発足は1877年で、数学を含む「東京数学会社」として、自然科学の学会では日本で最初に生まれました。ドイツ物理学会は1845年、アメリカ物理学会は1899年創設ですから、その先見性は誇るべきものです。数物学会誌をVol.4(1888-1891)で欧文論文誌化したように、発足当初から世界を見据えた学術研究と我が国の学問、科学の発展を通じて、近代日本の成立に大きな寄与をしました。戦後、数物学会を解散し、1946年に日本物理学会を設立し、新しいスタートを切りました。戦前の制限された条件の中でも世界をリードする研究を続けた結果、戦後の復興期には湯川・朝永のノーベル賞受賞によって国民の中に理科ブームを生み出しました。我が国がその後発展する礎を築くにあたり、日本物理学会が果たした役割には大きなものがあります。

世界の物理学界における貢献も大きく、欧米に並ぶ学問拠点として世界の物理研究に広く影響を与えつつ、国内外に活動を展開してきました。近年、急速な発展を遂げているアジア諸国など新たな学問拠点が台頭する中、日本物理学会に寄せられる世界からの期待はますます高まっています。

日本物理学会は、アメリカ物理学会、韓国物理学会、ドイツ物理学会など世界の物理学会と相互協定を結び、互いの会員が同等の資格で活動に参加できるようにしています。また、アジア太平洋物理学連合(the Association of Asia Pacific Physical Societies, AAPPS)のメンバー組織として、物理学の振興に向けた国際協力を推進しています。

日本物理学会は、日本物理学会誌(和文、月刊)により物理学界の情勢を会員に分かりやすく紹介しています。また、英文論文誌JPSJ (Journal of the Physical Society of Japan) 、 PTEP (Progress of Theoretical and Experimental Physics) を月刊で、国際会議録専用雑誌としてJPS Conference Proceedingsを不定期で刊行し、国の内外から投稿された物理学の研究成果を広く世界中に報告しています。また、掲載論文の中から編集部の推薦に基づいて論文を選び、周辺分野、他分野の研究者向けに平易な解説記事を作成し、JPS Hot TopicsJPSJ News and Commentsで紹介しています。さらに、物理教育に関する情報交換のための「大学の物理教育」誌(年3回刊行)、資料価値の高い論文をテーマ毎に収録した「物理学論文選集」、本会の関係する国際会議の会議録「プロシーディングズ」や、物理学に関する各種単行本などを刊行しています。

学会は毎年春と秋に年次大会・秋季(春季)大会を開催し、会員に研究発表ならびに討論の場を提供しています。春、秋ともに5,000人を超える会員が参加します。毎年夏に開催する一般向け講習会では、そのときどきの話題となるテーマをとりあげ、物理学の基礎から最近の成果に至るまでわかりやすく紹介しています。

学会はまた、物理教育のあり方に関する検討や関係団体・機関への働きかけ、国際会議の開催、海外の物理学会との交流・協力、国際学術団体・研究機関との交流をはかるなど、国内だけでなく国際的にも物理学の進歩・発展のために重要な役割を果たしています。

物理学を通じた社会・教育への連携活動も学会の重要な役割です。市民科学講演会、オンライン物理講話、青少年及び一般社会人を対象とする公開講座、小中学生を対象とする自然の不思議―物理教室など、学生・生徒や市民の方々に物理学をわかりやすく伝え、興味をもっていただくための種々の活動を行っています。年次大会の期間にあわせて開かれるJr.セッションでは、多くの高校生が研究発表を行い、現役物理学者の質問やコメントに触れて大きな刺激を受けています。

2007年には、文部科学省が国からの委託を受けて実施した 「科学技術関係人材のキャリアパス多様化促進事業」に2007年に採択され、2019年まで日本物理学会キャリア支援センターの活動が続けられました。その後も、次世代人材育成プロジェクトの一環として、産業界や社会と大学院生・研究者をつなぐキャリア支援イベントを開催しています。日本物理学会が科学技術人材のキャリアパス支援に取り組む意義は、単に若い人材の活躍の場を拓き、有能な若手に多様な職業領域へ進出するための支援を行う、ということにとどまりません。この事業に学会として自ら取り組むことによって、物理学の力をより多様な分野で発揮し、未来のより豊かな、新しい物理学のあり方を探ることへとつなげていければと考えています。