JPSJ注目論文

JPSJ 2016年12月号の注目論文

深層学習を用いた2次元ランダム電子系の量子相転移の研究

 不純物や格子欠陥により結晶周期性が乱れている固体電子系は,金属相,アンダーソン絶縁体相,量子ホール絶縁体相,量子異常ホール絶縁体相,量子スピンホール相,トポロジカル絶縁体相,ワイル半金属相など様々な物質相を示す。それぞれの相において電子の波動関数は固有の特徴をもつ。しかし,実際に波動関数を眺めてみても,不純物等により波動関数の振幅は大きく揺らぎ,その特徴をつかむことは困難である。この研究ではここ数年著しい進歩を見せた多層畳み込みニューラルネットワークを用いた機械学習,いわゆる深層学習を用いて,結晶周期性が乱れた電子系の波動関数を画像解析した。これにより2次元の金属-絶縁体転移,および量子異常ホール絶縁体-絶縁体転移が深層学習により同定できることを実証した。

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原論文は以下よりご覧いただけます
Deep Learning the Quantum Phase Transitions in Random Two-Dimensional Electron Systems
Tomoki Ohtsuki and Tomi Ohtsuki, J. Phys. Soc. Jpn. 85, 123706 (2016).


分子性物質での伝導電子と分子自由度が結合した電子系

 平面分子TMTSFと電気双極子モーメントを持つ非対称陰イオンからなる伝導物質(TMTSF)2FSO3は、特異な陰イオンの構造のため、同系物質と大きく異なり多様で特異な電子状態を示す。SeとFのNMRで伝導電子の振舞と陰イオンのダイナミクスのそれぞれを微視的に観測することにより、この系が伝導電子と陰イオンの構造や電気的性質に起因する分子自由度が結合した系であることが明らかになった。

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原論文は以下よりご覧いただけます
MR Evidences of the Coupling between Conduction Electrons and Molecular Degrees of Freedom in the Exotic Member of the Bechgaard Salt (TMTSF)2FSO3
Hidetaka Satsukawa, Akio Yajima, Ko-ichi Hiraki, Toshihiro Takahashi, Haeyong Kang, Younjung Jo, Woun Kang, and Ok-Hee Chung, J. Phys. Soc. Jpn. 85, 124710 (2016).