JPSJ注目論文

JPSJ 2022年1月号の注目論文: 非線形応答を生み出すモデルパラメータの系統的抽出法

近年、反強磁性体の異常ホール効果・ネルンスト効果といった電気伝導や熱伝導、電気磁気効果などの交差相関応答が盛んに研究されている。このような線形および非線形物性応答の分析において、一体の遍歴電子模型に含まれる微視的パラメータのうち応答の発現に不可欠なパラメータを特定するための系統的な解析法が提案された。応答の発現に不可欠なパラメータが明らかになると、多様な物性応答に対して発現機構の微視的な理解が進み、新たな機能性物質の開発においても有益な指針が得られる。

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原論文は以下からご覧いただけます。
Systematic Analysis Method for Nonlinear Response Tensors
Rikuto Oiwa and Hiroaki Kusunose
J. Phys. Soc. Jpn. 91, 014701 (2022)

JPSJ 2022年1月号の注目論文: 極低温でも凍結しないスピンの動的性質の観測

量子スピン液体は、高温超伝導発現機構との関連性や量子コンピューティングへの応用の可能性などが指摘されており、その実現と解明は物理学における重要課題の一つとなっている。本論文はスピン液体の実現が有力視される量子カゴメ反強磁性体のモデル物質としてCaCu3(OH)6Cl2・0.6H2Oに注目し、μSR法よって82 mKという極低温下までスピンの動的性質を詳細に調べたものである。その結果、この物質は7.2 Kで磁気相転移を示すにも関わらず、最低温度まで「ゆらゆら」とスピンが揺らぎ続ける動的な性質を示すことを初めて明らかにした。

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μSR Study of Kapellasite-type Quantum Kagome Antiferromagnet CaCu3(OH)6Cl2 ∙ 0.6H2OO
Hiroyuki K. Yoshida, Hirotaka Okabe, Soshi Takeshita, Hubertus Luetkens, Akihiro Koda, and Ryosuke Kadono
J. Phys. Soc. Jpn. 91, 013701 (2022)