JPSJ注目論文

JPSJ 2023年2月号の注目論文:ガラス形成液体の非ニュートン性は何が決めているのか?

"流れが速くなればなるほど,液体のべたべたさの度合い(=粘性)が小さくなる"というシアシニング現象は,ほとんどのソフトマター(複雑流体)系で観測される普遍的な非ニュートンレオロジー現象である.それはガラス形成液体の場合にも例外ではないが,その発生機構については,現在も明らかではない.ガラス形成液体はstrong、fragileと呼ばれる異なる二つの動的クラスに大別されることが知られている.本研究では,ミクロな変形様式がこれらの動的クラスで大きく異なることを示すとともに,この違いに着目し,それぞれの動的クラスについて,シアシニングの発生要件を予測する表式を提案された.この予測式は,シミュレーションや実験結果とよく一致するだけでなく,一般的な実験観測量のみで表現されており,現実問題への適用が容易である.

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原論文は以下からご覧いただけます。
The Qualitative Difference in Flow Responses between Network-Forming Strong and Fragile Liquids
Akira Furukawa, J. Phys. Soc. Jpn. 92, 023802 (2023).

JPSJ 2023年2月号の注目論文:フォノンは結晶カイラリティーを見るか?

空間反転や鏡映の対称性を一切持たないカイラル結晶は,電子のスピン軌道相互作用に由来して電気と磁気さらには熱の自由度が絡んだ多彩な交差物性を発現することに興味が持たれ,精力的に研究されている.本研究では,カイラルな結晶構造に起因する電子物性以外の最も基本的な物性として格子振動,すなわちカイラル結晶特有のフォノン物性の微視的起源の解明がなされた.特にフォノンのエネルギー分散が理論的に調べられた.その結果,微視的有効模型が満たすべき条件が示され,横波フォノンの円偏光の向きによるエネルギー分裂の特徴が明らかにされた.

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原論文は以下からご覧いただけます。
Theory of Energy Dispersion of Chiral Phonons
Hirokazu Tsunetsugu and Hiroaki Kusunose, J. Phys. Soc. Jpn. 92, 023601 (2023).