JPSJ注目論文

JPSJ 2025年6月号の注目論文:電流によって溶ける"電子の氷"

電流によって"電子の氷"が溶ける現象が、二酸化バナジウム(VO2)で見つかった。VO2は約340 Kで金属・絶縁体転移を示すが、この転移を電流や電圧で制御する非線形伝導に関する研究が進んでいる。この現象が、ジュール発熱によらずに、電流によって"電子の氷"が溶ける、いわば本質的な非平衡効果によるものであるかを見極めるのが長年の課題であった。単結晶VO2に対して赤外放射温度計により温度を測定した上で精密実験が行なわれ、非熱的な非線形伝導と電流誘起の非平衡相転移であることが発見された。この成果は、非平衡物性の理解を進める画期的なものである。

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Current-induced Nonequilibrium Phase Transition Accompanied by Giant Gap Reduction in Vanadium Dioxide
Akitoshi Nakano, Masato Imaizumi, and Ichiro Terasaki
J. Phys. Soc. Jpn. 94, 063705 (2025).

JPSJ 2025年6月号の注目論文:交替磁性体とスピン軌道結合がもたらす新奇な超伝導状態

第三の磁性体として注目を集めている交替磁性体にラシュバ型スピン軌道結合を導入したモデルにおいて,クーパー対全体が重心運動量を持つ有限重心運動量超伝導の実現が理論的に提案された.交替磁性体がもつ異方的なバンド分裂とラシュバ型スピン軌道結合が組み合わさると,フェルミ面が四極子的に変形し,超伝導の安定化に重要な役割を果たすことが明らかとなった.これは,空間反転対称性のない交替磁性体における超伝導状態の理解に新たな視座を提供する成果である.

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Finite-momentum Superconductivity in Two-dimensional Altermagnets with a Rashba-type Spin-Orbit Coupling
Kohei Mukasa and Yusuke Masaki
J. Phys. Soc. Jpn. 94, 064705 (2025)

JPSJ 2025年6月号の注目論文:結晶構造の時計回りと反時計回りを識別する

グラセライト型化合物Na2BaM(PO4)2M は2価の金属)は、最近、データベーススクリーニングを用いた物質探索の手法によりフェロアキシャル秩序の発現が予言され、さらに粉末中性子線回折実験により同秩序に起因する構造相転移が実証された新たなフェロアキシャル物質である。フェロアキシャル秩序に敏感な光学現象である電気旋光効果を用いた偏光顕微イメージング測定により、Na2BaM(PO4)2のフェロアキシャルドメイン構造が可視化されたことが報告された。また、この手法における微小な電気旋光シグナルが検出可能となる測定条件が明らかになり、同手法が多様なフェロアキシャル物質のドメイン観測に適用可能であることが示された。

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Ferroaxial Domain Imaging in Glaserite-type Na2BaM(PO4)2 (M = Mn, Co, and Ni)
Yoichi Kajita, Takeshi Hayashida, Shigetada Yamagishi, Kenta Kimura, and Tsuyoshi Kimura
J. Phys. Soc. Jpn. 94, 063702 (2025)