日本物理学会誌

第67巻 第05号

cover-12-05.jpg表紙から

陽電子1個と電子2個の束縛状態であるポジトロニウム負イオンを生成し,レーザー光を照射することによって,光脱離を引き起こす実験に成功した.左上の図はその実験装置,左下は光脱離領域の詳細図である.図には示されていないが,陽電子のビームラインおよび光脱離領域は,全て超高真空チェンバー内に設置されている.ライナックで生成されるパルス状低速陽電子ビームを,ナトリウム蒸着したタングステン表面に入射してポジトロニウム負イオンを放出させ,電場で加速したのちに高出力パルスNd : YAGレーザーの基本波を照射した.右図は得られたγ線エネルギースペクトルである.528 keVに見られるピークはポジトロニウム負イオンの生成に起因するものである.レーザー光の照射によって,このピークの強度が減衰しており,ポジトロニウム負イオンの光脱離が起こっていることを示している.詳細は本号に掲載されている長嶋泰之氏らの「最近の研究から」記事を参照のこと.



■口絵
今月号の記事から303

■巻頭言
JPSJ編集委員長への就任にあたって    安藤恒也 305

■最近のトピックス
荷電ボトモニウムZbの発見    保坂 淳 306

■和達三樹先生の思い出に寄せて    Mark Ablowitz,Harvey Segur,訳 矢嶋 徹 308

■交 流    ハッブルかルメートルか:宇宙膨張発見史をめぐる謎    須藤 靖 311

■解 説
ソフトマターのマルチスケールシミュレーション    谷口貴志,山本量一 317
重いクォーク物理の進展―QCDと量子力学系ポテンシャルの対応―
駒 佳明,駒 美保 325

■最近の研究から   
最も軽い三体束縛系―ポジトロニウム負イオンの研究―
長嶋泰之,満汐孝治 333
物質中の繰り込み群による原子核の記述    月山幸志郎 338
タンパク質系分子シミュレーションのための力場関数
榮 慶丈,依田隆夫,杉田有治,岡本祐幸 343

■JPSJの最近の注目論文から 1月の編集委員会より    川畑有郷 350

■学界ニュース
2011年Rolf Wideroe賞:黒川眞一氏 352
2011年Gersh Budker賞:矢野安重氏 352
2011年度朝日賞:香取秀俊氏 352

■新著紹介353
・大沢流 手づくり統計力学:永山國昭
・カダノフ/ベイム 量子統計力学:北孝文

■編集後記 藤山 茂樹