日本物理学会誌

第77巻 第12号

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■表紙の説明
表紙左上は実際のビスマス結晶(一辺約3 cm)の写真で,そこから繋がっているのは原子1つ分の厚み(約0.4 nm)しか持たないビスマス単原子膜である.2018年にそのビスマス単原子膜で幅1 nmの奇妙な模様が発見されたが,なぜそのような模様が現れるかは謎であった.今回,その原子スケールの奇妙な模様が,キリンやシマウマ,熱帯魚など,生物の模様と同一の「チューリング・パターン」であることが初めて示された(図のタテジマキンチャクダイの縞模様は幅約1 cm).これは同時に,世界最小のチューリング・パターンを見出したことにもなる.イラストでは,7桁も異なるスケールをあえて同一スケールで描き,チューリング理論がスケールや物質,学術分野の枠を越えて,普遍的に成り立っていることを象徴的に表している.詳細は本号に掲載されている伏屋雄紀氏,勝野弘康氏の「最近の研究から」記事を参照のこと.


■巻頭言
物理学会の国際化について思うこと  野尻浩之 ...... 785

■解 説
量子スピンアイス――遅い光と遍歴する磁気モノポール  宇田川将文 ...... 788
高次元場の理論の広がり  林 博貴,八木 太 ...... 796

■最近の研究から
結晶成長させた窒化物を用いた超伝導量子ビット
金 鮮美,寺井弘高,山下太郎,猪股邦宏 ...... 805
ポンプ・プローブ超解像顕微法――蛍光,誘導放出,光熱多モードの実現
小林孝嘉 ...... 811
ビスマス,原子サイズでチューリング・パターンを描く  伏屋雄紀,勝野弘康 ...... 817

■話 題
宇宙核物理を築いた女性研究者たち――カレンダー国際プロジェクトと日本国内における取り組み
川畑貴裕 ...... 823

■JPSJの最近の注目論文から
8月の編集委員会より  宮下精二 ...... 827

■PTEPの最近の注目論文から  林 青司 ...... 830

■新著紹介 ...... 832
電磁気学とベクトル解析:小菅佑輔
スピントロニクスの基礎と応用;理論,モデル,デバイス:能崎幸雄