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名誉会員の近藤淳氏逝去(3月16日更新)

公開日:2022年3月15日

本会名誉会員の近藤淳先生が、去る2022年3月11日にご逝去されました。謹んで哀悼の意を表します。

近藤先生は、1930年のお生まれで、1954年に東京大学理学部物理学科をご卒業され、日本大学理工学部助手、東京大学物性研究所助手を経て、通商産業省工業技術院の電気試験所主任研究員、電子技術総合研究所(現在の産業技術総合研究所)主席任研究員を長く務められました。また1990年から5年間、東邦大学教授も務められました。

先生のご業績は、「近藤効果」という名前で広く世界に知られているところです。通常の金属は、温度の低下と共に電気抵抗が減少しますが、ごくわずかな磁性不純物を含む金属の場合、電気抵抗がある温度で極小値をもって、それより低温では増大するという異常な振る舞いを示すことが知られていました。長年の謎であったこの「電気抵抗の極小現象問題」に対し、近藤先生は、これが不純物の局在スピンと伝導電子の電子多体系の相互作用に起因するということを理論的に解明されました。この近藤効果は、単に希薄磁性合金の問題だけでなく、多数の粒子間の相互作用による一般の多体効果に共通する基本的性質であることが明らかになり、物性物理学のみならず物理学全体に大きなインパクトを与えました。

これらの業績により、仁科記念賞(1968年)、日本学士院恩賜賞・日本学士院賞(1973年)、朝日賞(1979年)、藤原賞(1984年)、文化功労者(2003年)、文化勲章(2020年)など数多くの顕彰を受けられました。

日本物理学会は、この偉大な近藤理論の業績が、現在のPTEPの前身であるProgress of Theoretical Physics誌に発表された(1964年)ことを、誇りに思います。一昨年の文化勲章の受賞をお慶び申し上げたばかりでしたのに、突然の訃報に驚くとともに、我が国の偉大な研究者を失ったことに大きな悲しみを禁じえません。先生の物理学へのご貢献に感謝し、心よりご冥福をお祈りいたします。


2022年3月16日
一般社団法人 日本物理学会 会長
田島 節子