楽しい物理実験室(物理教育委員会)

2019年度 自然の不思議―物理教室

2019年度物理教室
開催案内はこちら

(各講座の概要や、
お申込方法を掲載しております)

「自然の不思議-物理教室」は、様々な実験を通して楽しみながら物理現象を学ぶことができる、小学生高学年・中学生向けの体験型実験教室です。
毎回、専門の講師を招き、物理現象や実験を丁寧に解説いただきます。
国立科学博物館(東京・上野)の実験室にて、年に複数回開催しています。








2019年度の開催日程・講座名は次のとおりです。(各回定員20名)

第1回 6月9日(日) 「船の汽笛の音がする「ゴム手袋ホーン」をつくろう!」
第2回 6月22日(土) 「見守っている羊、かくれんぼする子どもなど不思議な錯視」
第3回 7月6日(土) 「ダイオードで遊んでみよう」
第4回 7月20日(土) 星の距離を測るのはどれだけ難しいのでしょうか?
第5回 8月3日(土) 「下敷きスピーカーの製作」
第6回 8月18日(日) 「磁性流体を作ってみよう」

ご参加ご希望の方は、国立科学博物館のWEBページ内イベントカレンダーをご覧ください。
※イベントカレンダー上で、物理教室が開催される日程をクリックされますと、物理教室の詳細情報・お申込方法がご覧いただけます。
お問合せ先:国立科学博物館 学習企画・調整課 TEL:03-5814-9888


教室の様子


第6回 8月18日(日)「磁性流体を作ってみよう」

中村 仁 先生(電気通信大学)

顕微鏡でも見えないくらいの小さな磁石の粒を液体のなかに分散させたものを磁性流体といいます。「液体」ですが、永久磁石を近づけるとするすると近づいてきたり、円錐状の「構造」が現れたりします。市販品の磁性流体の多くは、磁石の粒として鉄の黒錆(くろさび)を使っています。今回の教室では2種類の塩化鉄(2価の鉄と3価の鉄イオン)の塩酸水溶液を混ぜ、そこにアルカリ性の水溶液(アンモニア水)を加えていくことで、黒錆の小さな粒(微粒子)をつくり、界面活性剤を加えて磁性流体を作って観察することを目的としました。
前半は磁性流体の紹介と市販品を使った演示実験でした。磁性流体という言葉はほとんどの参加生徒が知りませんでしたが(タイトルなのですが)、シャーレに注がれた磁性流体が下においた磁石の動きにあわせて不思議な形に変化する様子をみると、「見たことある!」という生徒が大半でした。その後、酸性とアルカリ性の液体を扱う実験なので、注意点が何度も確認され、実験を開始しました。
まずは緑色の2価の液体と赤褐色の3価の液体をビーカーにとり、一度席に戻った後で、アンモニア水を受け取ります。アンモニア水をスポイトで、鉄イオンの溶液に1滴落とすと、酸とアルカリの液体が混じったところですぐに黒色の物質が現れます。しかしガラス棒で撹拌すると、たちまち消えてしまいます。この滴下と撹拌の作業を、アンモニア水が無くなるまで丁寧に繰り返しました。ここで上手く反応が進むと、黒色の液体が出来ます。何名かは赤褐色の液体になってしまいました。アンモニア水を全て入れた後、しばらく静かに放置すると、黒錆の粒子が沈殿を始めます。ものすごく丁寧(ゆっくりと)実験を行なうと、粒子が細かすぎて沈殿するのに時間がかかりました。ビーカーの下に磁石をおいて、沈殿のスピードを早め、上澄み液を捨て、蒸留水で洗う作業をした後で、プラスチック容器に移して界面活性剤を加えて撹拌し、磁石を下からあてて観察しました。何名かの参加者がこの状態に到達した段階で時間切れとなり、はじめから「時間があったら」と予定されていた市販品の磁性流体をつかった観察は、お土産で配布されました。
教室終了後に粘った生徒も数名いて、教室で作った磁性流体でスパイク現象を観察することも出来ました。

実験の様子1 実験の様子2

実験の様子3 実験の様子4

実験の様子5


第5回 8月3日(土)「下敷きスピーカーを作ろう」

村石 幸正 先生(中央大学)

身の回りの家電製品のほぼ全てについていそうな「スピーカー」を、エナメル線で自作したコイルと永久磁石に下敷きを組み合わせて作ってみました。 前半では「音」について、まず空気の密度が周期的に変化する様子の説明から始まり、さらにそれが空間を進む様子が解説されました。教室で工作する下敷きスピーカーの完成品の演示があり、小さな音を、いかに工夫したら大きく聞こえるようになるか、の紹介がありました。
後半は実際に工作を行いました。10メートルのエナメル線を筒のまわりにきれいに巻いてコイルを作りました。上手く巻ける人、途中でバラバラになってしまう人、様々でしたが、スタッフも協力して全員がコイルを巻き上げました。2つの磁石で下敷きを挟み、さらにそれにテープでコイルを固定しスピーカーを作りました。前半で完成品を見ていたはずですが、余りの簡単な構造に、本当に音が聞こえるのか半信半疑の子供が大半でしたが、実際にCDプレーヤーのヘッドフォン出力と自作スピーカーをつなげて、耳元に近づけると音楽が聞こえました。音楽が聞こえた瞬間の子供の表情は、驚きと満足感や感動が混じったような、いい顔をしていました。
最後に、コイルの巻き数を変えたり、磁石の強さや位置を変えたり、下敷きの代替品を試したり、といった「自由研究」の題材になる話を紹介して頂きました。

実験の様子1 実験の様子2

実験の様子3 実験の様子4

実験の様子5 実験の様子6


第4回 7月20日(土)「星の距離を測るのはどれほど難しいのでしょうか?」

三好 真 先生(国立天文台)

前半は星までの距離を測るために、望遠鏡の出現以前の人々が用いた三角測量法の原理や、当時の測定結果による地動説・天動説の話など、星までの距離の測定がいかに困難であるのかのお話がありました。さらに私たちの住んでいる地球の属する銀河の大きさや形、「動かない」と考えられてきた恒星の運動の話、これから立体模型をつくる北斗七星も、ひしゃくの形に見えるのは今だけ(といっても、形が変わるのは10万年後とかですが)など、距離も時間もスケールの大きな話に、参加生徒は驚いていました。
後半は立体星座工作キット「北斗七星」を用いた工作を行いました。注意深く星の位置を定めて完成させた模型を、のぞき穴から見ると、見慣れたひしゃくの形が現れました。一方で、箱の上から星の並びをみると、とてもひしゃくの形とは関係なさそうな形でした。改めて、地球からみたときにあの形になることが理解できました。

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第3回 7月6日(土)「ダイオードで遊んでみよう」

市原 光太郎 先生(東京学芸大学附属高校)

発光ダイオードやトランジスタ、フォトレジスタ(CdS光センサ)などを使って、ブレットボード上でいろいろな電子回路の工作を行いました。発光ダイオードを点灯させる回路に始まり、光センサやトランジスタ、コンデンサを組み合わせた回路を作成し、明るさを変化させる回路や複数のLEDを交互に点滅させる回路等、様々の電子回路を作りました。ブレッドボードを初めて使う生徒が多い中、一つ一つの素子の位置や向きの確認を丁寧に行い、全員が目的とする回路を作り上げました。オプション用に用意したLEDと光センサを使って圧電ブザーを鳴らす回路の作製まで進んだ生徒もいました。
過電流によると思われるトランジスタの故障やブレッドボード自体の接触不良など、「教科書の通りに作ってもうまくいかない」場合も経験しました。思い通りに動作しない中で先生と一緒に問題解決をした経験は、きっと将来の宝になると思います。
今回は先生の教え子だった大学生が手伝いに参加してくれました。年齢の近い「先生」がいて、より子供たちが質問しやすい教室となりました。

実験の様子1 実験の様子2

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第2回 6月22日(土)「見守っている羊、かくれんぼする子どもなど不思議な錯視」

舩田 優 先生(元千葉県立船橋高等学校)

人間の思い込み(先入観)からくる様々の錯視を、具体的な作品を見たり、工作して体験しました。
物体の凹凸は、左右の目で得られる画像を人間の脳の中で合成して認識されます。右側に影が出来ると人間は(左から光が当たっていると思って)その像が凸であると解釈する傾向があります。これを利用して、右側に影のある凹んだ羊の顔を工作し、観察しました。多くの生徒は「凹んだ顔を作った」ことを記憶しているので、なかなか出っぱった顔には見えませんが、両目ではなく片目で観察すると凸状に見えてくる生徒が出始め、さらにデジカメで撮影した2次元の画像では凸に見えることも確認できました。
次に14人の子供が遊んでいる様子が描かれた絵を、上下左右に分割し、左右を入れ替えることで子供の数が13人に減ったり、15人に増えたりする、不思議な絵の体験をしました。上だけで1人、下だけで1人、上下で1人と認識できる組み合わせが、分割した絵の入れ替えで変わることからくる体験ですが、大人でさえも「えっ?」と数え直してしまうものでした。

最後に、黒い大きな紙の上の赤い紙が浮いて見える3Dメガネを体験し、これまでの3Dメガネの歴史についても学び、心理学でも用いられている有名な絵を幾つか紹介して終了しました。

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第1回 6月9日(日)「船の汽笛の音がする「ゴム手袋ホーン」をつくろう!」

車田 浩道先生(私立三浦学苑高等学校)

船の汽笛は「ボー!」という低く大きな音ですね。 丈夫な紙筒とゴム手袋、それに息を吹き込むためのストローなどを組み合わせて、汽笛を発生するホーンを作りました。 上手くホーンが作れたら、ゴム手袋の押さえ方を変えてみたり、紙筒の長さを変えてみたり、紙筒の太さを変えてみたり、ゴム手袋の硬さを変えてみたり、様々の「条件」を変えてホーンを作り、音がどう変わりそうかを予想してから実際に音を出してみました。
今回は小学生・中学生に混じって「大人」の参加者も多かったのですが、大人でも結果の予想が難しい実験もあり、「実験条件の変え方」、「予想することの重要さ」、「実際に実験することの重要さ」などを学びました。

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