JPSJ注目論文

JPSJ 2012年2月号の注目論文

強電場下電気伝導に現れるサイクロトロン共鳴

半導体結晶中の伝導電子は磁場中でローレンツ力を受け周期的なサイクロトロン軌道運動を行う。これに周波数の等しいマイクロ波を加えると共鳴的な吸収が起こる。これがサイクロトロン共鳴の原理で、共鳴周波数から有効質量などの電子構造に関する情報を得ることができる。一方、半導体より伝導度が高い金属結晶では、表皮効果のためマイクロ波が試料内部に侵入できず、表面近傍での軌道運動を反映したAzbel-Kaner共鳴が起こる。
マイクロ波の振動電磁場の代わりに、他の方法で振動的な電子運動を励起しても、サイクロトロン軌道運動との共鳴が起こるはずである。強電場下の結晶内電子は真空中のように無限には加速されず、結晶からBragg反射を受け往復運動(Bloch振動)を行う。このBloch振動をサイクロトロン軌道運動と結合させれば、強電場下の磁場中電気伝導に共鳴現象が現れるはずである。これは表皮効果による制約がないため、金属でも観測可能な効果となる。


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