JPSJ注目論文

JPSJ 2012年7月号の注目論文

重い電子系超伝導体UPt3のスピン3重項対関数の同定

 重い電子系UPt3の対関数の対称性が最新の角度分解熱伝導率測定を踏まえて理論的に決定された。スピン3重項で軌道部分がf波である超流動3HeのB相と類似のこの状態は、これまでに観測されている多重相図のみならず、最近の熱伝導率測定で観測された2回対称性も説明できることから、長年に渡って不明であったこの系の対関数が決定されたと言える。また、これはこの物質がトポロジカル超伝導体であることも同時に意味していて、古くからの物質に新たな角度から光があたろうとしている。

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原論文は以下よりご覧いただけます
A Spin Triplet Superconductor UPt3
Yasumasa Tsutsumi, Kazushige Machida, Tetsuo Ohmi, and Masa-aki Ozaki: J. Phys. Soc. Jpn. 81 (2012) 074717


私たちは心臓にBekki-Nozakiホールなる位相特異点を持っているか?

 高精度・高分解能の計測が可能な超音波医療診断装置を使って、健康な人の心臓の大動脈弁閉鎖時に、心室中隔壁上を非線形波の位相特異点が伝播する様子を観測した。この非線形波の振る舞いが1次元複素Ginzburg-Landau方程式の厳密解の一つとして知られているBekki-Nozakiホール解と一致していることが示された。

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Bekki–Nozaki Hole in Traveling Excited Waves on Human Cardiac Interventricular Septum
N. Bekki, Y. Harada, and H. Kanai: J. Phys. Soc. Jpn. 81 (2012) 073801


バスタブ渦の起源(要旨)

 浴槽内の水を排水するときに見られるバスタブ渦の回転方向は台風と同じく北半球では反時計まわりであるという「俗説」が知られている。この論文では,完全に軸対称な容器と流れの条件のもとで数値シミュレーションを行うと,北半球では反時計まわり,南半球では時計まわりのバスタブができることを明らかにし,「俗説」が正しいことを証明した。

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原論文は以下よりご覧いただけます
Origin of the Bathtub Vortex and Its Formation Mechanism
Naoto Yokoyama, Yuki Maruyama, and Jiro Mizushima: J. Phys. Soc. Jpn. 81 (2012) 074401



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