JPSJ注目論文

JPSJ 2012年10月号の注目論文

3個目の113番元素の合成を新たな崩壊経路で確認

 理研において3個目となる113番元素の同位体278113からの崩壊を観測。これまでの2例で観測されていた崩壊パターンを補完するルートを確認。光の速さの10%に加速された原子番号30の亜鉛原子を原子番号83のビスマス原子に衝突させ続け合成とその確認に成功。113番元素の最も確実な発見と言える。「元素周期表に日本発の名前を書き込む」という日本の科学者の夢が、また一歩実現に近づいた。

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New Result in the Production and Decay of an Isotope, 278113, of the 113th Element
Kosuke Morita, Kouji Morimoto, Daiya Kaji, Hiromitsu Haba, Kazutaka Ozeki, Yuki Kudou, Takayuki Sumita, Yasuo Wakabayashi, Akira Yoneda, Kengo Tanaka, Sayaka Yamaki, Ryutaro Sakai, Takahiro Akiyama, Shin-ichi Goto, Hiroo Hasebe, Minghui Huang, Tianheng Huang, Eiji Ideguchi, Yoshitaka Kasamatsu, Kenji Katori, Yoshiki Kariya, Hidetoshi Kikunaga, Hiroyuki Koura, Hisaaki Kudo, Akihiro Mashiko, Keita Mayama, Shin-ichi Mitsuoka, Toru Moriya, Masashi Murakami, Hirohumi Murayama, Saori Namai, Akira Ozawa, Nozomi Sato, Keisuke Sueki, Mirei Takeyama, Fuyuki Tokanai, Takayuki Yamaguchi, and Atsushi Yoshida: J. Phys. Soc. Jpn. 81 (2012) 103201


高次多極子がもたらす磁場誘起相

 正方晶の希土類化合物Yb2Pt2Pbに対して約80 mKという極低温下において直流磁化測定を行った。この物質のYbイオンの磁気モーメントは特定の軸方向に対して平行または反平行にしか向かない強い磁気異方性を持つと考えられている。ところが高磁場に現れる秩序相内において、そのような異方性では説明のつかない磁化の線形的な増加と連続的な飽和が観測された。この奇妙なふるまいは、高磁場相の秩序変数として高次の多極子モーメントを考慮すると理解することができる。

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Low Temperature Magnetization of Yb2Pt2Pb with the Shastry–Sutherland Type Lattice and a High-Rank Multipole Interaction
Yasuyuki Shimura, Toshiro Sakakibara, Ken Iwakawa, Kiyohiro Sugiyama, and Yoshichika Ōnuki: J. Phys. Soc. Jpn. 81 (2012) 103601


半導体的な電気伝導の近傍で最適化される新しいBi系2次元超伝導

 ごく最近発見されたBiS2層を有する新しい超伝導体の圧力下電気抵抗測定から,半導体的な電気抵抗が圧力下で抑えられる過程において超伝導の最適条件が存在することが示唆された。新超伝導のメカニズムを解明する上で重要な手掛かりになることが期待される。

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Pressure Study of BiS2-Based Superconductors Bi4O4S3 and La(O,F)BiS2
Hisashi Kotegawa, Yusuke Tomita, Hideki Tou, Hiroki Izawa, Yoshikazu Mizuguchi, Osuke Miura, Satoshi Demura, Keita Deguchi, and Yoshihiko Takano: J. Phys. Soc. Jpn. 81 (2012) 103702


d1正方格子をもつ新超伝導体BaTi2Sb2O

 銅酸化物における高温超伝導の発現機構解明には、構造・電子状態が類似した非銅系の超伝導体の合成が重要である。京都大学工学研究科を中心とする研究グループは、新物質BaTi2Sb2Oにおいて超伝導 (Tc = 1.2 K) を観測した。BaTi2Sb2OはTi2O正方格子を有する層状物質であり、銅酸化物と構造類似性が高い。また、ハーフフィリングの3d1電子状態(Ti3+)をとるため、3d9の銅酸化物とは電子-ホールが対称的な電子状態となっている。この新超伝導体の発見は、銅酸化物における高温超伝導の発現機構解明に大いに役立つと期待される。

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Superconductivity in BaTi2Sb2O with a d1 Square Lattice
Takeshi Yajima, Kousuke Nakano, Fumitaka Takeiri, Toshio Ono, Yuko Hosokoshi, Yoshitaka Matsushita, James Hester, Yoji Kobayashi, and Hiroshi Kageyama: J. Phys. Soc. Jpn. 81 (2012) 103706



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