JPSJ注目論文

JPSJ 2013年3月号の注目論文

磁気相関の次元性の制御による量子臨界点へのアプローチ

 京都大学と慶応大学のメンバーからなる研究グループは、従来の強磁性量子臨界相図と異なる相図をもつ重い電子系Ce(Ru1-xFex)POに関し、磁気励起の磁場方向・Fe置換量依存性を調べることにより、この系の強磁性の抑制はFe置換により磁気相関が三次元から二次元に変化することで引き起こされていることを明らかにした。実際の物質において、量子臨界現象に磁気相関の次元性が制御パラメーターとして扱われる場合は珍しく、今回の発見は量子臨界現象における制御パラメーターの豊富さや量子臨界相図の多様性を示唆する興味深い結果となっている。

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原論文は以下よりご覧いただけます
Ferromagnetic Quantum Critical Point Induced by Tuning the Magnetic Dimensionality of the Heavy-Fermion Iron Oxypnictide Ce(Ru1-xFex)PO
Shunsaku Kitagawa, Kenji Ishida, Tetsuro Nakamura, Masanori Matoba, and Yoichi Kamihara: J. Phys. Soc. Jpn. 82 (2013) 033704


光で作られた隠れた準安定相

 光励起と固体中の相互作用を上手に組み合わせれば、熱励起では到達できない準安定相に到達できる可能性がある。筑波大学数理物質系のメンバーを中心とする研究グループは、温度では相転移を示さないNa0.79Co[Fe(CN)6]0.902.9H2O薄膜(NCF90)をフェムト秒レーザーで光励起を行い、Coの価数状態の時間発展を調べた。その結果、電荷移動状態であるCo2+の寿命が32 nsと極端に長いことを見出した。このような長寿命は、準安定状態の形成を強く示唆している。

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原論文は以下よりご覧いただけます
Photoinduced Phase Transition into a Hidden Phase in Cobalt Hexacyanoferrate as Investigated by Time-Resolved X-ray Absorption Fine Structure
Yutaka Moritomo, Hayato Kamioka, Takayuki Shibata, Shunsuke Nozawa, Tokushi Sato, and Shin-ichi Adachi: J. Phys. Soc. Jpn. 82 (2013) 033601



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