お知らせ一覧

祝 2015年ノーベル物理学賞受賞(10月6日,7日分更新)

Prof_Kajita.jpg
梶田隆章教授(東京大学) 写真提供:東京大学

ニュートリノが質量をもつことを示すニュートリノ振動の発見により2015年のノーベル物理学賞を受賞された梶田隆章教授(東京大学)Arthur B. McDonald教授(Queen's University,カナダ)に日本物理学会として,心からのお祝いを申し上げます。

梶田教授は日本物理学会の長年の会員でもあります。日本物理学会は,受賞業績に関する情報をホームページ,日本物理学会誌を通して発信していく予定です。

受賞理由のより詳しい解説がノーベル財団のサイトで見られます。

日本物理学会会長 藤井保彦



中畑雅行・東大宇宙線研神岡宇宙素粒子研究施設長から日本物理学会に寄せられたメッセージ

日本物理学会誌 第70巻 第12号 「学界ニュース 梶田隆章氏のノーベル賞受賞」 (荒船次郎)



解説:今回の受賞理由は「ニュートリノが質量を持つことを示すニュートリノ振動の発見」です。素粒子物理学の標準模型では,3種類あるニュートリノはどれも質量がゼロであるとされていました。梶田教授をはじめとするスーパーカミオカンデ実験グループは,宇宙線が大気と衝突するときに生成される大気ニュートリノの観測により,飛行中にニュートリノの種類が変わるニュートリノ振動の確実な証拠を1998年に世界で初めて示しました。また,2001年頃,今回のノーベル物理学賞を同時受賞されたArt McDonald教授が主導したカナダのSNO実験などにより,30年来の謎であった太陽ニュートリノ問題の原因がニュートリノ振動であることも明らかになりました。ニュートリノ振動はニュートリノに質量がないと起こらない現象であり,標準模型が完全でないことの最も明確な実験的証拠です。現在ではニュートリノ質量や混合の研究は素粒子物理の主要なテーマの一つとなっており,中でも日本のニュートリノ実験は世界をリードする成果をあげ続けています。梶田教授の業績は,その新しい時代への道を切り開いた成果として,まさにノーベル賞にふさわしいものであると言えます。(東大院・理 横山将志)



なお,梶田教授は本学会が刊行する英文誌,Progress of Theoretical and Experimental Physics誌とその前身のProgress of Theoretical Physics誌,およびJournal of the Physical Society of Japan誌に以下の論文を掲載しています。すべてオープンアクセスです。

1. Atmospheric Neutrinos

Prog. Theor. Phys. Supplement 123, 483-490 (1996), doi:10.1143/PTPS.123.483

2. Neutrino oscillation physics potential of the T2K experiment

Prog. Theor. Exp. Phys. 2015, 043C01 (2015), doi:10.1093/ptep/ptv031

3. Physics potential of a long-baseline neutrino oscillation experiment using a J-PARC neutrino beam and Hyper-Kamiokande

Prog. Theor. Exp. Phys. 2015, 053C02 (2015), doi:10.1093/ptep/ptv061

4. Search for Nucleon Decay into Charged Lepton+Mesons

J. Phys. Soc. Jpn. 54, 3213-3216 (1985), doi:10.1143/JPSJ.54.3213

5. Search for Nucleon Decays Catalyzed by Magnetic Monopoles

J. Phys. Soc. Jpn. 54, 4065-4068 (1985), doi:10.1143/JPSJ.54.4065

6. Search for Nucleon Decays into Anti-Neutrino+Mesons

J. Phys. Soc. Jpn. 55, 711-714 (1986), doi:10.1143/JPSJ.55.711

7. Atmospheric Neutrino Background and Pion Nuclear Effect for KAMIOKA Nucleon Decay Experiment

J. Phys. Soc. Jpn. 55, 3786-3805 (1986), doi:10.1143/JPSJ.55.3786

8. Time Variation of the Cosmic Ray Muon Flux in Underground Detectors and Correlationwith Atmospheric Temperature

J. Phys. Soc. Jpn. 60, 2808-2811 (1991), doi:10.1143/JPSJ.60.2808



また,上記のより詳しい解説にあるように,Progress of Theoretical Physics誌にはニュートリノ振動の可能性を指摘した重要な論文が掲載されています。こちらもあわせてご参照下さい。

Remarks on the Unified Model of Elementary Particles

Ziro Maki, Masami Nakagawa and Shoichi Sakata
Prog. Theor. Phys. 28, 870-880 (1962), doi: 10.1143/PTP.28.870



梶田教授は,多くの記事を日本物理学会誌に寄稿されており,これらは国立情報学研究所のサーバー上でオープンアクセスになっています。以下にそれらをご紹介します。

カミオカンデにおける大気ニュートリノ観測の最新結果 (「談話室」欄)(1994年)

スーパーカミオカンデにおけるニュートリノの観測 
(「最近の研究から」欄)(1997年)←会誌編集委員長・広報委員長のお薦め

ニュートリノ振動の証拠――スーパーカミオカンデにおける大気ニュートリノの観測から―― (「話題」欄)(1998年)会誌編集委員長・広報委員長のお薦め

大気ニュートリノ振動の発見 
(特集「ニュートリノの物理―小柴昌俊氏のノーベル物理学賞受賞を記念して―」)(2003年)

戸塚洋二先生を偲ぶ (「追悼」欄)(2008年)

宇宙線研究所の果たしてきた役割 (特集「宇宙線100周年」)(2012年)※共著