会長メッセージ

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会長メッセージ

 このたび、第79期の会長に選任され、その重責に身の引き締まる思いです。先人たちが築いてきた伝統の上に立ち、会員皆さまのご協力を得て学会をますます盛り上げるべく微力を尽くして参ります。
 令和4年度の1年間、田島節子前会長のもと副会長として学会運営に関わり、様々なことを学ぶことができました。同時にこれからの課題もはっきり見えてきました。大きな課題として、会員数の減少問題と大会・年会の開催問題が挙げられます。後者は、学会の最も重要な事業ですので、最優先に取り組むべき喫緊の問題です。田島前会長が、大規模大学に対して将来の開催地候補としての可能性を探り、また開催校の実行委員会の負担を軽減する方式に変更し、ある程度の見通しができたと言っていいかと思いますが、それをもとに毎年の大会・年会を実施していくのは我々の責任であります。また、オンライン形式と現地開催形式の交互開催というやりかたも今後の動向を見ながら最適化する必要があると感じています。
 会員数減少問題は、学会の財務に直結するだけでなく、我が国全体の研究力低下問題にも関わる重大なことですので、1、2年の短期に解決できる問題ではありませんが、不断の努力が必要な問題といえます。18歳人口の減少や産業構造の変化など、一学会としてはどうすることもできない社会的背景が大きな要因であることは様々な調査から明らかになっていますが、それにしても本会としてもっと努力する余地が多くあると感じています。対策として2つの方向性を考えています。一つは物理学のフロンティアを広げること、二つ目は学生・若手研究者や留学生・外国人研究者への働きかけを強化することです。
 今、データ科学や人工知能、量子計算が、従来の計算物理の枠を超えてさまざまな分野で急速に展開されつつあります。本会にその動きをしっかりと取り込み、それを学会活性化の起爆剤にしたいと考えています。それぞれの分野、領域で点在するそれらのトピックスを集めて横のつながりを作り、さらには産業界や一般市民、高校生・大学生にも見える形にすれば、常に進化する物理学の魅力と有用性が伝わるではないかと考えています。
 また、もっと広く高校生や大学前期程度の若者たちにしっかりと顔が向いている学会だというアピールができないかと考えています。私が学生時代に重宝した物理学会の「論文選集」は廃止されて久しいですが、各専門分野への新規参入者たちに役立つ入門書的な書籍の出版は学会の役目かもしれません。また、理科好きの一般市民や高校生を受け入れる「会友」制度が本会には存在しますが、会友にとって魅力的なコンテンツを増やして会友を格段に増やし、将来会員になってくれる若手や物理学会のシンパを増やしたいと夢見ています。コロナ禍を機に始まったオンライン物理講話は会友・会員に好評を得ており、さらに昨年、会員が行ったプレスリリースのまとめサイトを本会ホームページ上に新設して、会友メルマガで配信することを始めました。また、Youtubeなども活用して各会員が行っているアウトリーチ活動と協同することも考えられます。会員の皆様のお知恵を拝借できれば幸いです。
 さらに、学生会員や若手研究者たちにとって、研究交流だけでなく就職活動やキャリアパスなどの情報交換の場を作ることも重要と考えています。年2回の年会・大会での交流は貴重な機会ですが、オンライン大会が増えた現状では、違った形での交流の場が若手に必要だという声をよく聞きます。若手や学生会員たちは、シニアの会員が想像よるよりも深刻にコロナ禍の影響を受けているようで、若者の孤立化の傾向が強まっているとの話も聞きます。若手・学生会員の相互交流のプラットフォームづくりを本会がお手伝いできる仕組みを検討したいと思っています。
 最近の大学入試の動向をみると、理学・工学系進学志望の高校生、とくに女子生徒が増えているようで、心強い限りです。一方、従前から活動してきた本会の男女共同参画推進委員会を、令和4年度にダイバシティ推進委員会と改称し、ジェンダーギャップの問題だけでなく、留学生や外国人研究者に対してもっと目配りする形ができないか検討したいと考えています。日本語ができない会員にも満足してもらえる学会、母国に帰国してからも本会の会員を継続したいと思える学会にするにはどうしたらいいのか。会員の皆さまのご理解とご協力、あるいはご提案をお願いいたします。

第79期会長
長谷川 修司
HASEGAWA Shuji
(第79期 会長任期:2023年3月31日より2024年3月31日)
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