日本物理学会の活動

日本物理学会について

日本物理学会(学会)は広く国内外の物理学の研究者・教育者・技術者約18,000名を擁する組織で、会員の研究成果を内外に発表し、また会員の研究上の便宜をはかることを目的として、さまざまな活動を行っています。2008年現在で会員の約45%が大学、15%が民間企業、12%が公的研究機関に所属しており、大学院生を含む学生の割合は約14%です。

発足は1877年で、数学を含む「東京数学会社」として、自然科学の学会では日本で最初に生まれました。ドイツ物理学会は1845年、アメリカ物理学会は1899年創設ですから、その先見性は誇るべきものです。数物学会誌をVol.4(1888-1891)で欧文論文誌化したように、発足当初から世界を見据えた学術研究と我が国の学問、科学の発展を通じて、近代日本の成立に大きな寄与をしました。戦後、数物学会を解散し、1946年に日本物理学会を設立し、新しいスタートを切りました。戦前も制限された条件の中で、世界をリードする研究を続けた結果、戦後の復興期に湯川・朝永のノーベル賞受賞によって国民の中に理科ブームを生み出し、我が国がその後発展する礎を築くにあたり、日本物理学会が果たした役割には大きなものがあります。

世界の物理学界における役割にも大きなものがあり、欧米に並ぶ学問拠点として世界の物理研究に大きな影響を与えつつ、国内外に活動を展開してきました。近年、急速な発展を遂げているアジア諸国など新たな学問拠点が台頭する中、日本物理学会に寄せられる世界からの期待もますます高まっています。

学会は、アメリカ物理学会、韓国物理学会、ドイツ物理学会など世界の物理学会と相互協定を結び、互いの会員が同等の資格で活動に参加できるようにしています。

学会は、月刊誌日本物理学会誌により物理学界の情勢を会員に分かりやすく紹介しています。また英文論文誌JPSJ(JOURNAL OF THE PHYSICAL SOCIETY OF JAPAN) を毎月発行しています。これらの刊行を通して、国の内外から投稿された物理学の研究成果をひろく世界中に報告しています。
最近の特筆すべき動きはPTP(Progress of the Theoretical Physics)事業の日本物理学会への移行方針の決定です。
2008年12月に理論物理学刊行会理事会はJPSJとPTP の二誌の統合を目指した議事メモに基づき、物理学会理事会に二誌統合の議論の開始を要望しました。
これを受けて物理学会理事会は既に63期の理事会で準備されていたPTP統合問題検討協議会による検討を開始しました。
上記協議会は2009年7月にPTP統合問題に関する報告書を提出し、物理学会理事会ではこれを基にして、「刊行会のPTP事業を日本物理学会に移行する」検討委員会を設置し、今後の方針について検討を進めています。

さらに、物理教育に関する情報交換のために「大学の物理教育」誌(年3回刊)、資料価値の高い論文をテーマ毎に収録した「物理学論文選集」、本会の関係する国際会議の会議録「プロシーディングズ」や、物理学に関する各種単行本などを刊行しています。

なお、英文誌の発行と頒布を集約化して効率的にするため、応用物理学会と協力して、2000年4月に「物理系学術誌刊行協会」(Institute for Pure and Applied Physics、略称IPAP)を設立しました。上記英文論文誌JPSJは、応用物理学会の「Japanese Journal of Applied Physics」「Optical Review」の2誌とともに刊行をIPAPに委託しています。創立以来、IPAPの活動は電子化ジャーナルへの対応を含めて十分な成果を挙げてきましたが、論文誌の寡占状態が進行する状況のもとで、さらにジャーナルの発展を目指すには次のことが必要と考えられます。

  • (1)ジャーナルと会員との距離の短縮、
  • (2)オープンアクセス運動への対処など学会による刊行・経営への本格的取り組み。
  • (3)新公益法人法への対処のために学会活動の事業と会計の明示。

これらに効率的に対応するため、両学会は2008年4月をもってそれまでの任意団体としてのIPAPを両学会協同の内部組織と位置づけ、物理系学術誌刊行センター(IPAP)を発足させました。両学会はその後も刊行センターの運営について協議を重ね2010年7月に、運営に関する協定書を締結しました。刊行センター(Publication Center for Pure and Applied Physics)は両学会の共同の作業場として位置づけられ、両学会それぞれの職員が協力し、情報を交換しながらそれぞれのジャーナルの発展を目指しています。

学会は毎年春と秋に年会・分科会を開催し、会員に研究発表ならびに討論の場を提供しています。春、秋ともに5000人を超える会員が参加します。毎年夏に開催する一般向け講習会では、そのときどきの話題となるテーマをとりあげ、物理学の基礎から最近の成果に至るまでわかりやすく紹介しています。

学会はまた、物理教育のあり方に関する検討や関係団体・機関への働きかけ、国際会議の開催、海外の物理学会との交流・協力、国際学術団体・研究機関との交流をはかるなど国内だけでなく国際的にも物理学の進歩・発展のために重要な役割を果たしています。

物理学を通じた社会・教育への連携活動も学会の重要な役割です。年次大会にあわせた市民科学講座、高校生以上を対象とした科学セミナー、公開講座、小中学生を対象とする楽しい理科実験室など、学生・生徒や市民の方々に物理学をわかりやすく伝え、興味をもっていただくための種々の活動を行っております。春の年次大会の期間中に開く、主として高校生の研究発表会であるJrセッションでは多くの高校生が現役物理学者の質問・コメントに触れて大きな感激を得ております。

さらに、文部科学省が国からの委託を受けて2006年度より実施した 「科学技術関係人材のキャリアパス多様化促進事業」の 2007年度分に応募して採択されました。物理学会の計画する事業はその名称が「物理学の資質を持つ人材活用のためのキャリアパス開発全国展開」であり、東京大学、金沢大学、お茶の水女子大学、神戸大学大学院人間発達環境学研究科の4つの機関と連携して、2010年3月まで活動が続けられました。委託期間の終了後も、キャリア支援センターの機能を残しています。
日本物理学会が、科学技術人材のキャリア多様化支援事業に取り組む意義は、単に若い人材の活用の道を開く、有能な若手に多様な職業領域へ進出するための支援を行う、という意味にとどまりません。この事業に学会として自ら取り組むことによって、より豊かな物理学の領域へ、物理学の力をより多様な分野で発揮し、自ら21世紀の新しい物理学のあり方を探ることへとつながっていければと考えています。