日本物理学会誌

第67巻 第01号

cover-12-01.jpg表紙から
様々な原子核を,中性子数を横軸,陽子数を縦軸にとって2次元平面上に配置したものを「核図表」という.上図の青・緑・黄色の部分は,原子核の寿命によって色分けした核図表であり,青は安定核,それ以外は不安定な核である.ストレンジクォーク(sクォーク)をもつ Λ 粒子などのハイペロンが構成要素として入った原子核をハイパー核というが,核図表に第3軸としてストレンジクォークの数(-S, Sはストレンジネス量子数)をとると,こうしたハイパー核も配置できる.2階部分には Λ 粒子が1個,3階部分には Λ 粒子が2個入ったハイパー核でこれまでに実験的に観測されたものを配置した.下図にこの2階部分の Λ ハイパー核核図表の詳細を示す.観測した際の反応や実験方法によって色分けされている.赤枠で囲まれたハイパー核は,ガンマ線分光実験によってレベル構造が詳細に調べられたものである.専用の大型Ge検出器群Hyperballの登場によってハイパー核のガンマ線分光研究は近年大きく進展した.詳細は本号に掲載されている鵜養美冬氏らの「解説」記事を参照のこと.



■口絵
今月号の記事から 1

■巻頭言
新しい法人制度に対応した日本物理学会 倉本義夫 5

■解 説     
電子定在波とフリーデル振動
長谷川幸雄,小野雅紀,鈴木孝将,江口豊明 6
精密 γ 線分光が明らかにしたハイパー核の世界 鵜養美冬,田村裕和 14
実験室宇宙物理学―大型レーザーによる宇宙模擬実験―  高部英明 23

■最近の研究から 
陽電子束縛化合物の第一原理計算 立川仁典,北 幸海 33
宇宙原理の観測的検証 柳 哲文,中尾憲一 37
半導体励起子のボース・アインシュタイン凝縮 吉岡孝高,五神 真 44
超新星での元素合成とニュートリノ振動
鈴木俊夫,吉田 敬,千葉 敏,梶野敏貴 49

■JPSJの最近の注目論文から Vol. 80(2011)No. 10より 川畑有郷 55

■談話室     第41回天文天体物理若手夏の学校開催報告 古澤 圭 57

■新著紹介 59
 ・スピントロニクス―基礎編―:白井正文
 ・素粒子・原子核物理学の基礎~実験から統一理論まで~:住吉孝行

■編集後記 小島智恵子