日本物理学会誌

第67巻第03号

cover-12-03.jpg表紙から

東京大学物性研究所では世界でも他に類を見ない「電磁濃縮法」により超強磁場を発生し,物性研究に応用している.このプロジェクトは1980年初頭に開始され,右上図にあるような悪戦苦闘の長い技術開発を経て,現在では室内実験室では世界最高の730 Tを記録するに至っている.2007年からは銅内張主コイルが導入され,電磁濃縮中に偏心することなく(2枚のコマドリ写真参照),4 Tの初期磁場が最高磁場まで濃縮されるようになった(左上図).ファラデー回転法により得られた,幾何学的フラストレーションを持つスピネル磁性体ZnCr2O4(左下)の磁化過程(右下図).測定は自作クライオスタットの利用により極低温で行うことができる.磁化過程の非単調性は対称性の異なるスピン構造への変化に対応する.詳細は,本号に掲載されている嶽山正二郎氏の「実験技術」記事を参照のこと.

■口絵

今月号の記事から 153

■巻頭言

物理学者と社会と会誌 旭 耕一郎 155

■解 説

光を使った高エネルギー密度科学の展開 兒玉了祐 156

分子遷移周波数精密計測と基礎定数の変化検出 梶田雅稔 164

■実験技術

電磁濃縮法による室内世界最高磁場発生と物性物理への応用 嶽山正二郎 170

■最近の研究から
 
フラストレートした磁性体ボルボサイトのゆらぎと秩序 吉田 誠,瀧川 仁 179

トポロジカル量子相転移近傍におけるディラック電子の質量獲得
  佐藤宇史,瀬川耕司,高橋 隆,安藤陽一 184

■話 題

OPERA実験におけるニュートリノ速度の測定 小松雅宏 189

■JPSJの最近の注目論文から 11月の編集委員会より 川畑有郷 193

■学界ニュース

2011年度ノーベル物理学賞:S. Perlmutter氏,B. P. Schmidt氏,
    A. G. Riess氏―宇宙の加速膨張の発見  横山順一 196

第25回日本IBM科学賞物理分野:齊藤英治氏  前川禎通 197

                     :村上修一氏  古崎 昭 197

2011年度仁科記念賞:秋葉康之氏  延與秀人 198

               :藤澤彰英氏,居田克巳氏  伊藤公孝 198

■談話室 第56回物性若手夏の学校開催報告 東 陽一 199

■国際会議

日独ワークショップ「量子色力学の最近の動向」植松恒夫,川村浩之,熊野俊三 201

IUPAP Working Group on Communication in Physics 植田憲一 202

■追 悼
 田中昭二先生を偲ぶ 三浦 登 205

■新著紹介 206
・基礎からわかるナノデバイス:町 田 友 樹
・結晶欠陥の物理:白 井 光 雲

■編集後記 樽家 篤史