日本物理学会誌

第69巻 第6号

cover-14-06.jpg■表紙の説明 
電子はスピンに伴う磁気能率を持ち,その大きさを表すg因子はディラックの相対論的量子力学による値g=2から量子効果により約0.1%ずれることが知られている.このずれを異常磁気能率( g-2)と呼び,理論と実験の両面から最も精密に調べられている物理量である.最新の測定値はハーバード大グループによるもので,0.24×10-9もの相対精度に達している.理論的には量子電気力学(QED)でほぼ説明されることから,高精度の計算を通じてQEDの精密検証を与えてきた.現在の測定に見合う精度を得るには摂動論に基づく高次項の評価が必要であり,最近,QED補正の10次,すなわち5ループ項が数値的に決定された.10次に寄与するファインマン図形は12,672個に上る.表紙の図は,これらを32のゲージ不変な組に分類し,それぞれの組の代表例を挙げたものである.詳細は本号に掲載されている青山龍美氏らの「最近の研究から」記事を参照のこと.

■巻頭言
男女共同参画活動とは 森 初果  ......   349

■現代物理のキーワード
典型例で学ぶ双対性 立川裕二 ...... 352

■交流
植物の特性から見た含放射性セシウム降下物による農作物の汚染機構 田野井慶太朗 ...... 354

■シリーズ「量子論の広がり―非局所相関と不確定性―」 
AdS/CFT対応とエンタングルメント 高柳 匡,西岡辰磨,笠 真生 ...... 361

■最近の研究から
小型加速器から得られる中性子による99Mo等医療用RI生産に向けて 永井泰樹,橋本和幸 ...... 370
QED摂動論によるレプトン異常磁気能率の計算 青山龍美,早川雅司,木下東一郎,仁尾真紀子 ...... 376
SU(N)ハバードモデルを光格子中の冷却原子で実現する 田家慎太郎,高橋義朗 ...... 381
励起子ポラリトン系のBEC-BCS-LASERクロスオーバー理論 山口 真,小川哲生 ...... 386

■話題
はじめての閲読―閲読を依頼されたらどうするか?― 吉岡大二郎 ...... 392

■JPSJの最近の注目論文から
2月の編集委員会より 安藤恒也 ...... 394

■PTEPの最近の招待・特集論文から
2014年2月号より 坂井典佑 ...... 395

■追悼
大谷俊介さんを偲ぶ 小林信夫 ...... 397

■新著紹介 ...... 398
Astrophysics at Very High Energies:戸谷友則
これが物理学だ!;マサチューセッツ工科大学「感動」講義:堂谷忠靖