日本物理学会誌

第70巻 第12号

cover-15-12.jpg■表紙の説明 
理化学研究所RIビームファクトリーで1992年の完成以降,現在まで稼働中の原子線通過型の偏極重陽子イオン源.重陽子スピンの偏極状態をベクトル,テンソルの自由な組み合わせで,かつ偏極度80%以上のビームを供給する.スピン軸はイオン源直下のウィーンフィルターによって標的上のあらゆる方向に制御することが可能.世界初の超伝導リングサイクロトロンにより核子あたりのエネルギー400 MeVまで減偏極することなく加速される.この偏極重陽子ビームを使って行われた重陽子・陽子弾性散乱の高精度実験から,核子が3つ集まって相互作用する三体核力(三体力)の明らかな証拠が見つかり,三体核力の定量的な議論が始まった.現在,原子核物理学では,三体核力を含めた原子核・核物質の研究が活発に行われている.詳細は本号に掲載されている関口仁子氏の「解説」記事を参照のこと.

■巻頭言
一会計理事から見た日本物理学会  松井哲男 ...... 897

■現代物理のキーワード
新しいハドロンの存在形態:エキゾチックな多クォーク状態
瀧澤 誠 ...... 900

■シリーズ「国際光年IYL2015に寄せて」
望遠鏡:宇宙認識の発展
海部宣男 ...... 902

■解 説
核力はどこまで解っているか?―3体核力の実験的な現状―
関口仁子 ...... 912

■最近の研究から
クォークから中性子星へ―格子QCD計算を用いた新たな挑戦―
井上貴史 ...... 921

ハロゲン化鉛ペロブスカイト太陽電池
金光義彦,山田泰裕 ...... 926

■話題―身近な現象の物理―
超音波洗浄とソノルミネセンス
崔 博坤 ...... 932

■話題―企業の研究から―
ペタヘルツエンジニアリング創出に向けたアト秒光物性
~NTT物性科学基礎研究所における超高速光物理研究~
小栗克弥 ...... 936

■JPSJの最近の注目論文から
12月号特集企画より  上田和夫 ...... 941

■ラ・トッカータ
夫婦で物理を?  森井政宏 ...... 942

■学界ニュース
梶田隆章氏のノーベル賞受賞 荒船次郎...... 944

■新著紹介 ...... 946
Molecular Driving Forces; Statistical Thermodynamics in Biology, Chemistry, Physics, and Nanoscience:石崎章仁
強相関電子物理学:世良正文
光とは何か;虹のメカニズムから「透明マント」まで:小芦雅斗