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113番元素 ニホニウム(Nh)に正式決定 日本が初めての命名

公開日:2016年12月1日

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森田浩介氏 (写真提供:理化学研究所)

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理化学研究所 研究チーム(写真提供:理化学研究所)

すでにお知らせしましたように、IUPAC (国際純正・応用化学連合)より113番元素の命名権が森田浩介氏(現九州大学)を中心とする理研の研究チームに与えられました(本会ニュース)。提案された元素名 Nihonium(ニホニウム)、元素記号 Nh(本会ニュース)について、IUPAC が一般からの意見を募集していましたが、このほど提案どおりとすることが正式に決定され、2016年11月30日に発表されました。

IUPAC は同時に 115番元素Moscovium (Mc), 117番元素Tennessine (Ts), 118番元素Oganesson (Og) の命名も発表しました。Og は不活性気体の性質を持つと考えられ、今回発表された4元素により周期律表の第7周期が完成したことになります。

理研の研究チームは亜鉛のイオンビームをビスマスの標的に照射し、融合反応によって113番元素を合成し、α崩壊の連鎖から溯って同位体を同定する、という物理学的手法を用い、アジア初の新元素命名につながる研究を行いました。
合成の確率は極めて低く、理研加速器の大強度ビームと、研究チームによる高選別能を持つ高効率検出装置の開発をもってしても、都合3個のニホニウム原子核を確認するのに足かけ10年近くを要しました。

なお、元素名の日本語「ニホニウム」は、日本化学会によって既に決定されています(リンク)。

日本の研究チームが元素を命名したことは、日本の科学史上初めてのことであり、またアジア地域においても初の快挙です。日本物理学会は、ここに改めて、本研究チームの過去10年以上におよぶご努力と日本の科学史上に残るご快挙に対し、心より敬意と祝意を表します。

なお、研究チームの実験結果は日本物理学会が刊行する学術雑誌Journal of the Physical Society of Japan (J. Phys. Soc. Jpn.) に出版されており、以下の論文が命名権決定の対象論文となっています。オープンアクセスです。

1. Experiment on the Synthesis of Element 113 in the Reaction 209Bi(70Zn,n)278113,
K. Morita et al., J. Phys. Soc. Jpn., 73, 2593-2596 (2004), doi: 10.1143/JPSJ.73.2593
2. Observation of Second Decay Chain from 278113
K. Morita et al., J. Phys. Soc. Jpn., 76, 045001 (2007) [2 pages], doi: 10.1143/JPSJ.76.045001
3. Decay Properties of 266Bh and 262Db Produced in the 248Cm + 23Na Reaction
K. Morita et al., J. Phys. Soc. Jpn., 78, 064201 (2009), doi: 10.1143/JPSJ.78.064201
4. New Result in the Production and Decay of an Isotope, 278113, of the 113th Element
K. Morita et al., J. Phys. Soc. Jpn., 81, 103201 (2012) [4 pages], doi: 10.1143/JPSJ.81.103201

また、本会では、日本物理学会誌に掲載された以下の記事をオープンアクセスとしております。ご自由にご覧ください。
森田浩介「新発見の113番元素」、日本物理学会誌 Vol. 60, No. 9, 698 (2005)
矢野安重「いかにして森田浩介らは113番元素の命名権を獲得したか」、日本物理学会誌 Vol. 71, No. 5, 330 (2016).

【外部リンク】
国際純正・応用化学連合(IUPAC)の発表
理化学研究所の発表