本学会会員の梶田隆章氏(東京大学宇宙線研究所長)が,ニュートリノに質量があることを実証,宇宙や物質の根源の解明に道を開いた業績により、文化勲章を受章され,文化功労者として顕彰されました。日本物理学会として,心からお祝い申し上げます。
日本物理学会会長 藤井保彦
なお,詳しい内容は日本物理学会誌で解説する予定です。受章対象の業績については,本会のニュースも合わせてご覧ください。
2015年10月アーカイブ
本講座は、盛況のうちに終了いたしました。
多数ご来場いただき、ありがとうございました。
今年度の内容につきましては、下記URLをご覧ください。
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2015年度公開講座の申込を受付中です。
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第10回若手奨励賞受賞者一覧を掲載いたしました。
詳しくはこちらをご覧ください。
梶田隆章教授(東京大学) 写真提供:東京大学
ニュートリノが質量をもつことを示すニュートリノ振動の発見により2015年のノーベル物理学賞を受賞された梶田隆章教授(東京大学),Arthur B. McDonald教授(Queen's University,カナダ)に日本物理学会として,
受賞理由のより詳しい解説がノーベル財団のサイトで見られます。
日本物理学会会長 藤井保彦
中畑雅行・東大宇宙線研神岡宇宙素粒子研究施設長から日本物理学会に寄せられたメッセージ
日本物理学会誌 第70巻 第12号 「学界ニュース 梶田隆章氏のノーベル賞受賞」 (荒船次郎)
解説:今回の受賞理由は「ニュートリノが質量を持つことを示すニュートリノ振動の発見」です。素粒子物理学の標準模型では,3種類あるニュートリノはどれも質量がゼロであるとされていました。梶田教授をはじめとするスーパーカミオカンデ実験グループは,宇宙線が大気と衝突するときに生成される大気ニュートリノの観測により,飛行中にニュートリノの種類が変わるニュートリノ振動の確実な証拠を1998年に世界で初めて示しました。また,2001年頃,今回のノーベル物理学賞を同時受賞されたArt McDonald教授が主導したカナダのSNO実験などにより,30年来の謎であった太陽ニュートリノ問題の原因がニュートリノ振動であることも明らかになりました。ニュートリノ振動はニュートリノに質量がないと起こらない現象であり,標準模型が完全でないことの最も明確な実験的証拠です。現在ではニュートリノ質量や混合の研究は素粒子物理の主要なテーマの一つとなっており,中でも日本のニュートリノ実験は世界をリードする成果をあげ続けています。梶田教授の業績は,その新しい時代への道を切り開いた成果として,まさにノーベル賞にふさわしいものであると言えます。(東大院・理 横山将志)
なお,梶田教授は本学会が刊行する英文誌,Progress of Theoretical and Experimental Physics誌とその前身のProgress of Theoretical Physics誌,およびJournal of the Physical Society of Japan誌に以下の論文を掲載しています。すべてオープンアクセスです。
Prog. Theor. Phys. Supplement 123, 483-490 (1996), doi:10.1143/PTPS.123.483
2. Neutrino oscillation physics potential of the T2K experiment
Prog. Theor. Exp. Phys. 2015, 043C01 (2015), doi:10.1093/ptep/ptv031
Prog. Theor. Exp. Phys. 2015, 053C02 (2015), doi:10.1093/ptep/ptv061
4. Search for Nucleon Decay into Charged Lepton+Mesons
J. Phys. Soc. Jpn. 54, 3213-3216 (1985), doi:10.1143/JPSJ.54.3213
5. Search for Nucleon Decays Catalyzed by Magnetic Monopoles
J. Phys. Soc. Jpn. 54, 4065-4068 (1985), doi:10.1143/JPSJ.54.4065
6. Search for Nucleon Decays into Anti-Neutrino+Mesons
J. Phys. Soc. Jpn. 55, 711-714 (1986), doi:10.1143/JPSJ.55.711
7. Atmospheric Neutrino Background and Pion Nuclear Effect for KAMIOKA Nucleon Decay Experiment
J. Phys. Soc. Jpn. 55, 3786-3805 (1986), doi:10.1143/JPSJ.55.3786
J. Phys. Soc. Jpn. 60, 2808-2811 (1991), doi:10.1143/JPSJ.60.2808
また,上記のより詳しい解説にあるように,Progress of Theoretical Physics誌にはニュートリノ振動の可能性を指摘した重要な論文が掲載されています。こちらもあわせてご参照下さい。
Remarks on the Unified Model of Elementary Particles
Ziro Maki, Masami Nakagawa and Shoichi Sakata
Prog. Theor. Phys. 28, 870-880 (1962), doi: 10.1143/PTP.28.870
梶田教授は,多くの記事を日本物理学会誌に寄稿されており,これらは国立情報学研究所のサーバー上でオープンアクセスになっています。以下にそれらをご紹介します。
・カミオカンデにおける大気ニュートリノ観測の最新結果 (「談話室」欄)(1994年)
・スーパーカミオカンデにおけるニュートリノの観測
(「最近の研究から」欄)(1997年)←会誌編集委員長・広報委員長のお薦め
・ニュートリノ振動の証拠――スーパーカミオカンデにおける大気ニュートリノの観測から―― (「話題」欄)(1998年)←会誌編集委員長・広報委員長のお薦め
・大気ニュートリノ振動の発見
(特集「ニュートリノの物理―小柴昌俊氏のノーベル物理学賞受賞を記念して―」)(2003年)
・戸塚洋二先生を偲ぶ (「追悼」欄)(2008年)
・宇宙線研究所の果たしてきた役割 (特集「宇宙線100周年」)(2012年)※共著
2015年ノーベル物理学賞を受賞される梶田隆章先生に心からお祝い申し上げます。
今回の授賞理由は「ニュートリノの質量の存在を示すニュートリノ振動の発見」です。ニュートリノには3つの種類があり、それぞれ電子ニュートリノ、ミューニュートリノ、タウニュートリノ(相互作用の固有状態)とよばれています。それらが飛行中に種類を変えてしまう現象をニュートリノ振動とよびますが、ニュートリノ振動が起こるためには、ニュートリノが質量をもち、かつそれぞれの相互作用の固有状態が異なる質量の固有状態の混合になっている必要があります。
梶田隆章先生は1983年からスタートしたカミオカンデ実験において、大気ニュートリノの電子ニュートリノ成分とミューニュートリノ成分の比が予想に合わず、「大気ニュートリノ異常」という問題を提起されました。そして、20倍以上大きいスーパーカミオカンデを使って、その異常の原因がニュートリノ振動であることを1998年に示されました。素粒子の標準理論ではニュートリノの質量がゼロであるとされていますが、梶田先生の発見は標準理論にほころびがあることを示す物でした。
これからは更なるニュートリノ研究をとおして、標準理論の先にある未知なる理論の解明、宇宙の物質優勢の謎が解けることを期待したいと思います。
東京大学宇宙線研究所神岡宇宙素粒子研究施設長
中畑雅行
2016年からの会費年額の以下の改定が第95回定時総会(2015年3月31日)
第7号議案で承認されております(会誌70巻6号本会記事474頁をご参照下さい)。
正会員: 12,000円(現行11,000円)
学生会員・正会員(大学院生)・シニア会員: 8,000円(現行7,000円)
なお、本号「会告」欄「会費年額改定と物理学会の財政状況について」も
合わせてお読みください。
ご協力のほど、どうぞよろしくお願い致します。
収納代行会社での入金確認に支障がでるため、締切日以降の申込みは受け付けられません。
ご了解をお願いいたします。
ミレニアム・サイエンス・フォーラムは9月25日、第17回サー・マーティン・ウッド賞受賞者を発表し、本会が推薦した、
・佐藤琢哉氏(九州大学大学院理学研究院准教授)
「偏光を用いた反強磁性体・フェリ磁性体における磁気励起の光学的生成と制御」
の受賞が決定しました。
詳しくは http://www.msforum.jp/about_sir_martin/ をご覧ください。