2016年10月アーカイブ

 福山秀敏氏は物性物理学において多大な業績を収めてこられた。東京大学理学部 久保亮五研究室で学位取得後、東北大学理学部助手、ハーバード大学ポスドク、ベル研究所研究員を経て、1977年に東京大学物性研究所に移られた。さらに、1992年東京大学理学部、1999年に東京大学物性研に戻られ所長、2003年東北大学金属材料研究所材料科学国際フロンティアセンター教授、2006年に東京理科大学理学部に移られ現在に至っている。
 同氏は、ホール効果・軌道磁性に関するグリーン関数を用いた定式化と種々の場合への応用(とくに後者は軌道磁性に関する「福山公式」として知られている)、一次元物質における電子格子相互作用による位相ハミルトニアン・各種ソリトンの研究、電荷密度波のダイナミクス、アンダーソン局在におけるスピン軌道相互作用および電子相関の効果等の微視的研究、ウィグナー結晶、励起子絶縁体の理論、超伝導近接効果、乱れとスピンパイエルス、量子トンネル現象、メゾスコピック系・電気伝導度の揺らぎ理論、有機導体における微視的モデルの提唱・電荷秩序状態の理論的予言、高温超伝導に対するRVB理論、スピンホール効果、質量のないディラック電子系のホール効果など幅広い分野にわたって重要な研究を行ってこられた。
 それに加えて、学術行政にも積極的に関わられ、東京大学物性研究所所長、東京理科大学副学長、同総合研究機構機構長を歴任された。さらに最近では、文部科学省の元素戦略プロジェクトを強力に牽引されている。また若手育成にも非常に熱心で、2007年に秋光純氏とともに凝縮系科学賞を設けられた。
 また、日本物理学会においては、第52・53期(1996.9~1998.8)の庶務理事を務められ、さらに男女共同参画推進委員会やJPSJ編集委員会の委員等を歴任された。2004年から現在に至るまで、JPSJ Advisory BoardのメンバーとしてJPSJに貢献されている。そしてまた国際純粋・応用物理学連合IUPAP副会長を務められる等、我が国の物理学コミュニティを代表して国際貢献を果しておられる。
(文責:藤井保彦、小形正男、大槻東巳)

以下に、福山氏の【主な受賞歴】 【代表的な業績】 【日本物理学会誌への寄稿】をご紹介します。ご覧ください。

【主な受賞歴】

1987年 第1回 日本IBM科学賞
1998年 第3回日本物理学会論文賞
1998年 第2回超伝導科学技術賞
2003年 紫綬褒章
2015年 瑞宝章中綬章

【代表的な業績】

【日本物理学会誌への寄稿】

福山氏は,多くの記事を日本物理学会誌に寄稿されており,これらは国立情報学研究所のサーバー上でオープンアクセスになっています。それらのうちの5編を以下にご紹介します。

日本学術会若手科学者ネットワークを経由して、文部科学省科学技術・学術政策研究所(NISTEP)から博士人材追跡調査について次のような依頼がありました。

本会では会員のキャリア支援を重要な活動に位置づけていますので、この調査に協力しています。該当者の皆さんのご協力をよろしくお願いします。

対象者 平成27年度中に、日本の大学院の博士課程を 修了した者全員。

実施日 平成28年10月18日(火)~ 平成28年11月15日(火)。

実施方法 大学から対象者に依頼を行う。

「博士人材追跡調査(平成24年度博士課程修了者_3 年半年後)」

対象者 平成24年度中に、日本の本の大学院の博士課 程を修了した者。

実施日 平成28年11月14日(月)~ 平成28年 11月30日(水)。

実施方法 科学技術・学術政策研究所(NISTEP)から対 象者へ直接依頼を行う。

詳しくは、http://www.nistep.go.jp/archives/29390

をご覧ください。

第11回若手奨励賞受賞者一覧を掲載いたしました。

詳しくはこちらをご覧ください。

第72回年次大会(2017年)から、一般講演の申込みは、会員各人の「マイページ」からのみとなります。また、従来可能だった「入会申し込み中」の状態での講演申込みはできず、紹介者2名の了承手続及び入会申込金の決済完了後にのみ申込可能となりますので、十分ご注意いただくようお願いいたします。まだ本会会員ではなく、第72回年次大会(2017年)で登壇予定の方をご存じの会員の方は、できるだけ早く入会のお手続きをするようお勧めください。紹介者2名の了承手続も、紹介者の「マイページ」からの手続となります。
(会誌9・10月号掲載)

また、「マイページ」のログイン についてのお問い合わせは、物理学会事務局にお問い合わせください。

以下は参考です。

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■日本物理学会会員の皆さんへお願い■
-アンケート調査にご協力ください-

    男女共同参画推進委員会委員長  板倉明子​

このたび,日本物理学会も加盟している男女共同参画学協会連絡会が,「第4回科学技術系専門職の男女共同参画実態調査」を 実施することになりました.
最近では2012年の同時期に行われた同趣旨の調査の第4回目であり,この4年間の状況の変化を追跡調査するための非常に重要なアンケートとなっています.
20-30分で回答できる程度の調査ですので,お手数ですがご協力をお願いします.アンケート質問票は下記のURLにあります.

http://www.djrenrakukai.org/enquete.html
回答の締め切り:2016年11月7日(月)

AAPPS Bulletinの10月号(Vol.26. No.5)が発刊されました。

APPS Bulletinは、Association of Asia Pacific Physical Societies が隔月に出版する会報です。

AAPPS BulletinのHPは http://aappsbulletin.org/

AAPPS Bulletinの10月号(Vol.26. No.5)のPDF版は

http://aappsbulletin.org/myboard/down.php?Board=webzine&filename=Vol26_No5_2016(OCT).pdf&id=278&fidx=2

よりダウンロード頂けます。

詳細は下記をご覧ください。

http://www.jps.or.jp/activities/suisen/2016-11-fujiwara.php

【解説】

物質は、たとえば水(H2O)が温度の違いによって氷(固体)・水(液体)・水蒸気(気体)とその姿を変えるように、温度や圧力等の条件によって様々な異なった状態を取る。これらは物質の「相」と呼ばれる。また、液体の水が摂氏零度で凍って固体の氷に変わるように、ある相が別の相に移るときには急激な変化をともなう。このような急激な変化は「相転移」と呼ばれる。今年のノーベル物理学賞を受賞するサウレス、ハルデーン、コスタリッツの3博士は、数学的な「トポロジー」概念に立脚し、自然界における新しいタイプの相と相転移の存在を理論的に見出し、人類の物質観に新たな視点を提供した。

数学分野のトポロジーとは、連続的な変形によって影響されない図形の「不変な」指標に着目するものである。たとえばドーナツやコーヒーカップには穴が1つあるが、野球のボールには穴はない。この場合の1と0という不連続な指標は変形によって変化しない。物質の「トポロジー的な(=トポロジカルな)」性質も、物質の状態が連続的に変化しても、その変化に影響されない「不変な」指標を与える。3氏は、このような物質のトポロジカルな性質を見出し、それに着目することにより、様々な物質が示す相と相転移に関する我々の理解を飛躍的に深化させた。さらに新たな相や相変化の発見に導く理論的基礎を築いた。1970年代初期に、コスタリッツ博士とサウレス博士は共同で、超流動体、超伝導体、磁性体の薄膜等が、当時知られていなかったタイプの「トポロジカルな相転移」(コスタリッツ-サウレス転移)を示すことを明らかにし、薄膜では相転移は起きないであろうという考えが主流であった当時の学界に大きな驚きを与えた。この理論では、トポロジカルな存在である「渦」状の励起が決定的な役割を果たしている。両氏による理論的な予言は実験によって確認され、その後の相転移概念の拡大につながった。またサウレス博士は1980年代に、強磁場下の半導体界面のホール伝導度が物理定数の組み合わせで得られるある値の整数倍の値しか取らない― 即ち「量子化されている」― という実験結果(量子ホール効果)を、背後に存在する電子系のトポロジー的な性質を明らかにすることによって解明した。ハルデーン博士は、比較的単純な平面状のモデルを用いて、磁場がなくても量子ホール効果が実現されうることを理論的に示した。また、ハルデーン博士は、量子効果を受ける鎖状の磁性体において、磁性体の構成要素である「スピン」自由度に由来したトポロジー的な性質が磁性体の低温での性質に顕著な影響を与えることを理論的に見出した(ハルデーン予想)。その後の実験によりハルデーン博士の理論的予想が確認され、強い量子効果を受ける磁性体に関するその後の研究の発展の端緒となった。

3氏の理論的仕事は薄膜(2次元)や鎖状(1次元)のような「低次元」物質に関するものであったが、その後の研究の進展により、今や多くの「3次元」物質においてもトポロジカルな相や相転移が重要な役割を果たすことが明らかになってきた。この点で、3氏の業績は、現在非常に活発に研究されているトポロジカル絶縁体の研究の礎となったといえる。量子コンピュータを含む将来のエレクトロニクス・超伝導技術への応用に向けた期待もあるが、何よりも、自然界における物質のエキゾチックな存在形態に対し新しい光を当てたという意味で、我々の物質観に大きな影響を与えた特筆すべき成果と言えよう。
(大阪大学大学院理学研究科 川村光)

【受賞理由に関連した過去の日本物理学会誌記事】

1. 「トポロジカル秩序とベリー位相」 初貝安弘 (2013) 68巻1号

2. 「2次元超流体の渦と相転移」 恒藤敏彦 (1980) 35巻6号

3. 「微小トンネル接合のネットワークにおけるKosterlitz-Thouless転移」
 神田晶申, 八木隆多, 山田廉一, 小林俊一 (1995) 50巻8号

4. 「微小接合をならべると」 勝本信吾 (1995) 50巻8号

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日本物理学会は,今後,受賞業績に関する情報をホームページ,日本物理学会誌を通して発信していく予定です。また,受賞理由のより詳しい解説がノーベル財団のサイトで見られます。

日本物理学会誌(BUTSURI)10月号が発行されました。

マイページからもご覧になれます。物理学70の不思議も更新されています。

第73~74期代議員候補立候補のお願い

日本物理学会代議員候補者への立候補を募集しております。
正会員各位は会誌10月号会告723頁記載の方法に従って、締切期日(10月28日)までにマイページからご応募下さい。

収納代行会社での入金確認に支障がでるため、締切日以降の申込みは受け付けられません。
ご了解をお願いいたします。

本講座は定員に達しましたので受付を終了させていただきました。
多数のお申込ありがとうございました。

http://www.jps.or.jp/public/koukai/koukai-2016-11-26.php

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